コラム
相続税の計算に使う路線価の調べ方!見方や計算方法を具体例で解説します
相続が発生すると、相続税の申告が必要になるケースがあります。相続税を計算する上で重要な要素の1つが、土地の評価額で、路線価をもとに算出するのが一般的です。
この記事では「路線価とは何か、どうやって調べるのか、路線価図の見方、そして路線価を使った土地評価の計算方法」まで具体例を交えてわかりやすく解説します。相続税について詳しくない方でも理解できるように、丁寧に説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
参考:相続税対策の第一歩!路線価方式による宅地評価の具体例と注意点をわかりやすく解説
1.路線価とは?
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の、1平方メートル(1㎡)当たりの価額のことです。国税庁が毎年公表しており、相続税や贈与税の算定に利用されます。
1)相続税路線価と固定資産税路線価の2種類がある
路線価には、相続税路線価と固定資産税路線価の2種類があります。相続税路線価は、相続税や贈与税の計算に用いられる路線価です。一方、固定資産税路線価は、固定資産税などの計算に用いられる路線価で、市区町村が評価します。
相続税路線価 | 固定資産税路線価 | |
対象の税金 | 相続税、贈与税 | 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税 |
評価主体 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
評価頻度 | 毎年 | 3年に1回 |
基準日 | 1月1日 | 基準年の1月1日 |
公表時期 | 毎年7月頃 | 基準年の4月頃 |
価格水準 | 公示価格の80%程度 | 公示価格の70%程度 |
確認方法 | 財産評価基準書など | 全国地価マップなど |
2)相続税の土地評価方法
路線価をもとにした相続税の土地評価は、以下のように計算できます。
土地の評価額=路線価×奥行価格補正率×その他の補正率×地積 |
路線価方式は、都市計画区域内の宅地を評価する際に用いられる一般的な方法ですが、路線価が定められていない地域については、市区町村の「評価倍率表」を参考に土地評価をします。
3)路線価と公示価格の違い
路線価と似たような言葉に「公示価格」があります。どちらも土地の価格を示す指標ですが、算出方法や用途が異なります。
路線価は相続税や贈与税の算定に用いられるのに対し、公示価格は土地の取引価格の目安や、公共事業の用地取得価格の算定などに用いられます。一般的に、路線価は公示価格の約80%と言われています。
2.路線価の調べ方
相続税の計算に必要な路線価は、国税庁の財産評価基準書「路線価図・評価倍率表」で確認できます。このサイトでは全国の路線価図を閲覧することができ、検索窓に住所や地名を入力するか、地図で目的の場所を表示させ、該当する土地の路線価を確認します。路線価図はPDF形式で提供されており、ダウンロードして印刷することも可能です。必要な場合は、印刷して手元に置いておくと便利です。
参考(以下の画像等も参照):国税庁「路線価図・評価倍率表」
路線価を確認する際の注意点
路線価を調べる際には、以下の点に注意が必要です。
①路線価図の公表時期
路線価図は、毎年7月1日にその年のものが公表されます。例えば、3月に相続が発生した場合でも、その年の路線価で計算する必要があるため、7月1日を過ぎなければ正確な土地の評価はできませんので注意しましょう。
②路線価図に記載がない地域
山林や畑など、市街地以外では路線価図に記載がない地域(倍率地域)も多くあります。路線価図で該当の土地が見つからない場合は、市区町村の「評価倍率表」を参照して土地を評価します。
参考:相続税の計算に必要な倍率方式による土地評価!具体例をパターン別に解説します
3.路線価図の見方
路線価図を正しく読み解くことは、土地の評価額を正確に把握し、適切な相続税対策を行う上で非常に重要です。一見複雑そうに見える路線価図ですが、ポイントを押さえれば、必要な情報を読み取ることができます。
1)路線価図の年分とページ
まず、路線価図の上部を確認しましょう。そこには、路線価図が作成された年分とページ番号が表示されています。相続が発生した年の路線価図であっているか確認しましょう。また、調べたい土地が路線価図の端にある場合は、隣のページにも土地がまたがっている可能性があります。必要に応じて、周辺のページも確認しましょう。
2)道路に付されているマークの種類
路線価図を見ると、道路に様々なマークが付されていることに気付くでしょう。これらのマークは、その道路がどのような地域に属しているのかを示す、地区区分を表しています。
地区区分とは、路線価地域において、宅地の利用状況がおおむね同一と認められる、一定の地域ごとに国税局長が定めた区分です。 地区区分は「ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区、中小工場地区および大工場地区」の7つに分類されています。
3)地区区分の見方
上記のマーク(記号)の上部または下部(路線の向きによっては右または左)が「黒塗り」または「斜線」で表示されている場合は、注意が必要です。
「黒塗り」の場合、その地区区分は「黒塗り」側の路線の道路沿いのみが該当します。一方、「斜線」の場合、その地区区分は「斜線」側の路線には該当しません。「黒塗り」や「斜線」ではなく「白抜き」の場合は、その地区区分はその路線全域に該当します。
4)借地権割合を示す記号
路線価の右隣にはA~Gの記号が表示されており、これは借地権の割合を示す記号となります。借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有する権利のことです。借地権が設定されている土地は、所有権が制限されているため、評価額が低くなります。
A~Gの記号は、それぞれ異なる借地権割合に対応しており、Aが最も高く、Gが最も低くなります。借地権割合が高いほど、土地の評価額は低くなるため、これらの記号は重要な情報となり、路線価図を見る際には意味を理解しておくことが大切です。
4.路線価を使った土地評価の計算方法
路線価図の見方がわかったところで、いよいよ路線価を使った土地評価の計算方法について解説します。土地の形状や接する道路の数によって計算方法が異なるため、それぞれ具体例を挙げながら見ていきましょう。
1)一路線に面する宅地
まずは、最もシンプルなケースである、一路線に面する宅地の評価額の計算方法です。
【参考数値】
奥行価格補正率:0.97(普通商業・併用住宅地区、奥行距離35mの場合) 借地権割合:70%(記号C) |
①自用地の価額
自用地とは、所有者自身が使用している土地のことです。一路線に面する自用地の価額は、以下の式で計算します。
路線価×奥行価格補正率=1㎡当たりの価格 1㎡当たりの価格×地積=自用地の価額 |
300,000円×0.97=291,000円 291,000円×700㎡=自用地の価額203,700,000円 |
②借地権の価額
借地権が設定されている場合は、借地権の割合を考慮して評価額を計算します。借地権の価額は、以下の式で計算します。
自用地の価額×借地権割合=借地権の価額 |
上記の例に当てはめると、以下のようになります。
203,700,000円×70%=借地権の価額142,590,000円 |
2)二路線に面する宅地
二路線に面する宅地の場合、それぞれの路線価を考慮して評価額を計算します。
【参考数値】
奥行価格補正率:1.00(普通商業・併用住宅地区、奥行距離20mの場合) 側方路線影響加算率:0.08(普通商業・併用住宅地区、角地の場合) |
①自用地の価額
二路線に面する宅地の評価額は、まず正面路線価を用いて評価額を算出し、次に側方路線価による影響を加算することで求められます。
正面路線価×奥行価格補正率=1㎡当たりの価格(A) (A)+(側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)=1㎡当たりの価格 1㎡当たりの価格×地積=自用地の価額 |
上記の例に当てはめると、以下のようになります。
300,000円×0.97=291,000円 291,000円+(200,000円×1.00×0.08)=307,000円 307,000円×700㎡=自用地の価額214,900,000円 |
これが、二路線に面する宅地の自用地の価額となります。
②借地権の価額
借地権の価額は、一路線に面する宅地の場合と同様に、自用地の価額に借地権割合を乗じて計算します。
214,900,000円×70%=借地権の価額150,430,000円 |
このように、路線価を使った土地評価の計算は、土地の形状や状況によって複雑になります。ご自身で計算する場合は、国税庁のホームページなどを参考に、慎重に進めるようにしましょう。
参考)奥行価格補正率表
参考)側方路線影響加算率表
5.相続税の土地評価は「税理士法人 翔和会計」へご相談ください
この記事では、相続税の計算に欠かせない路線価について「その調べ方や見方、計算方法」などを、具体例を交えて解説しました。路線価は、相続税額を左右する重要な要素となります。路線価図を正しく読み解き、土地の評価額を正確に把握することで、適切な相続税対策を講じることが可能になります。
しかし、相続税の土地評価は、複雑な要素が絡み合い、専門的な知識が必要となる場合も少なくありません。ご自身だけで判断することが難しい場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
「税理士法人 翔和会計」は、相続税に関する専門的な知識と豊富な経験を持つ税理士が、お客様一人ひとりの状況に合わせて、最適な相続税対策をサポートいたします。路線価を使った土地評価はもちろんのこと、相続税申告手続き全般、遺産分割、相続対策など、相続に関するあらゆるご相談に対応可能です。 相続税についてお困りのことがございましたら、お気軽に「税理士法人 翔和会計」へご相談ください。 |
参考:相続税の土地評価は自分でできる!具体的な手順と減税・節税の方法を解説