コラム
貸家建付地の評価|具体的な計算方法や注意点を解説
相続税の節税対策として有効な手段の1つに、「貸家建付地の評価」があります。貸家建付地とは、アパートやマンションなどの賃貸物件が建てられている土地のことで、更地や自用地とくらべて、相続税評価額を減額できます。
なぜなら、貸家建付地には借家人という第三者が関与しており、土地所有者の権利が制限されるからです。そのため、相続税評価額は、土地の所有者が自由に使える「自用地」よりも低く計算されます。
本記事では、貸家建付地の評価の概要、具体的な計算方法や注意点などを詳しく解説します。相続税対策を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
参考:相続税の貸宅地評価!目的となる権利区分により異なる計算方法を解説
目次
1.貸家建付地とは
貸家建付地とは、アパートやマンションといった賃貸物件が建てられている土地を指します。重要なポイントは、所有している土地に自ら賃貸目的の建物を建築し、第三者に貸し付けているという点です。
例えば、更地を他人に貸して、その人がアパートを建てて賃貸経営を行うようなケースは「貸宅地」となり、貸家建付地とは区別されます。貸家建付地となるためには、土地所有者自身が賃貸物件を所有し、その建物の敷地として土地を利用している必要があります。
また、借地借家法が適用される賃貸物件であることも条件です。一般的に、社宅などは適用外とされるため、自用地として計算されます。
2.貸家建付地の評価とは
貸家建付地の価格を計算する際には、「借地権割合・借家権割合・賃貸割合」などを正しく把握する必要がありますので、確認方法や算出の仕方をしっかりとおさえておきましょう。
1)貸家建付地を評価する計算式
貸家建付地の評価額=自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
※貸家建付地の評価に使用できます
参考:国税庁「B2-5 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」
2)貸家建付地の借地権割合・借家権割合
これらの割合は、国税庁ウェブサイトで確認できます。
地域によって異なりますが、一般的に地価の高いエリアほど借地権割合が高くなる傾向があります。借家権割合は、令和6年12月現在では、全国一律30%となっています。
3)貸家建付地の賃貸割合とは
賃貸割合とは、賃貸物件の延べ床面積のうち、実際に賃貸されている部分の割合のことです。戸数ではなく、床面積をもとに算出しますので、ご注意ください。例えば、マンションの全室が賃貸されている場合は100%、床面積の半分が空室の場合は50%となります。
①賃貸割合の算式
②課税時期に空室でも「賃貸中」としてカウント可能なケース
・一時的でなく継続的に賃貸されている ・空室後すぐに募集され、空室中は他の用途で使われていない ・空室は課税時期の前後1ヶ月程度など一時的である ※総合的に勘案されます |
3.貸家建付地の計算方法【具体例】
貸家建付地の評価額の具体的な計算方法を通して、理解を深めていきましょう。ここでは比較しやすいように「自用地価格、借地権割合、借家権割合」を固定し、賃貸割合(入居率)のみを変更した3つのケースをご紹介します。
【設例】賃貸マンション所有 自用地価格5,000万円、借地権割合50%、借家権割合30% |
ケース1)入居率100%の場合
上記の設例を計算式に当てはめてみましょう。
5,000万円-(5,000万円×50%×30%×100%)=4,250万円 |
このケースでは、賃貸マンションの全室が入居しているため、賃貸割合は100%です。その結果、貸家建付地の評価額は4,250万円となり、自用地価格である5,000万円から750万円減額されました。
ケース2)入居率80%の場合
ケース1と同様に、計算式に当てはめると下記となります。
5,000万円-(5,000万円×50%×30%×80%)=4,400万円 |
このケースでは、賃貸マンションの一部が空室であるため、賃貸割合は80%です。計算の結果、貸家建付地の評価額は4,400万円となり、ケース1よりも評価額が高くなりました。
ケース3)入居率60%の場合
5,000万円-(5,000万円×50%×30%×60%)=4,550万円 |
賃貸マンションの空室率が高く、賃貸割合は60%です。計算の結果、貸家建付地の評価額は4,550万円となり、ケース2よりもさらに評価額が高くなりました。
これらのケーススタディからわかるように、賃貸割合(入居率)が低いほど、つまり空室が多いほど、貸家建付地の評価額は高くなります。これは、空室が少ないほど、土地所有者の権利が制限されているとみなされるためです。
4.貸家建付地を評価する際の注意点
貸家建付地の評価を受ける際には、いくつかの要件や注意点があります。条件を満たしていない場合は、貸家建付地として認められず、評価額の減額を受けられない可能性がありますので、要件を正確に把握しておきましょう。
1)駐車場としての貸地は対象外
更地を駐車場として貸し付けている場合は、貸家建付地の対象外となります。これは、貸家建付地の対象となる建物が、借地借家法の適用対象となる建物に限定されているためです。月極駐車場やコインパーキングなどは、借地借家法の適用外となるため、注意が必要です。
2)賃貸マンションの住人用の敷地内駐車場は対象
一方で、賃貸マンションの住人向けに駐車場を提供している場合は、貸家建付地の対象となります。これは、マンションの賃貸借契約と駐車場の利用契約が一体不可分であるとみなされるためです。住人用駐車場は、マンションの付帯設備として捉えられ、貸家建付地の評価に含まれます。
3)小規模宅地の特例も適用可能
貸家建付地であっても、小規模宅地の特例を適用できる場合があります。小規模宅地の特例とは、一定の要件を満たす宅地について、相続税評価額を減額できる制度です。
貸付事業用宅地等に該当する場合は、200㎡までを限度として、評価額を50%減額できます。小規模宅地の特例は要件が複雑なため、適用したい場合は、土地評価に詳しい税理士への相談を検討しましょう。
4)賃貸併用住宅の賃貸部分は対象
自宅と賃貸部分を併用している住宅の場合、賃貸部分は貸家建付地として評価されます。自宅部分は自用地として評価されるため、それぞれの評価方法を適用する必要があります。
例えば、1階部分を賃貸し、2階部分を自宅として使用している場合は、1階部分は貸家建付地、2階部分は自用地として評価されます。
5)親族や知人等に安価で貸す場合は対象外になる可能性あり
親族や知人などに、市場価格よりも著しく低い賃料で賃貸している場合は、貸家建付地として認められない可能性があり注意が必要です。
貸家建付地として認められるためには、賃貸借契約が適正なものであり、他の部屋と同様の家賃設定(近隣相場に準ずる家賃)にする必要があります。
5.貸家建付地など相続税評価は「税理士法人 翔和会計」へお任せください
今回は、貸家建付地の評価について解説しました。貸家建付地とは、アパートやマンションなどの賃貸物件が建てられている土地のことで、相続税評価額を減額できる制度となります。
貸家建付地の評価を受けるには要件を満たす必要があり、例えば、駐車場としての貸地は対象外となりますが、賃貸マンションの住人用の敷地内駐車場は対象となります。また、親族や知人等に安価で貸す場合には対象外となる可能性があります。
貸家建付地は、相続税対策として有効な手段の1つですが、適用条件や注意点などをしっかりと理解しておくことが重要です。
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