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持ち家相続で損しないための節税対策9選|申告手続きと必要書類まで解説
投稿: 更新:ブログNEW
「持ち家相続の節税方法は?」
「持ち家の相続税は自分で計算できる?」
「持ち家相続の手続き方法が知りたい」
上記の疑問をお持ちの方は、相続税の支払いで、生活が困窮するような状況になりたくないとお悩みなのではないでしょうか。
また、相続税の負担を軽減し、家族がもめることなく円満に手続きを進めたいと考える方もいるでしょう。
一方で、小規模宅地等の特例や配偶者控除の適用、生前贈与などの節税対策を活用することで、相続の節税対策ができます。
本記事では、「持ち家相続の節税対策9選や申告・納付の手続き方法、必要書類」を紹介します。
また、相続税の納付期限と延滞金のリスクまで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
持ち家にかかる相続税とは?
持ち家を相続する際、持ち家の評価額に応じて相続税が課されます。
加えて、相続税は、被相続人から受け継いだ財産の総額が基礎控除額を超える場合に発生します。
基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の数 × 600万円)
たとえば法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となります。
もし持ち家を含めた遺産の総額が4,800万円を超えると、相続税の申告と納税が必要です。
また、小規模宅地等の特例を適用することで、一定の条件下で評価額を減額し、相続税の負担を軽減できます。
持ち家の評価額の計算方法
持ち家の評価額は、以下2つ方法で算出が可能です。
- 建物の評価
- 土地の評価(路線価方式、倍率方式)
それぞれ解説します。
建物の評価
持ち家の建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額をもとに算出します。
建物の評価 = 固定資産税評価額 × 1.0
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送付される「固定資産税課税明細書」に記載されており、建物の構造や用途、築年数などにより変動します。
また、賃貸物件の場合は、借家権割合や賃貸割合を考慮して評価額が調整されるため適宜確認をおこないましょう。
土地の評価(路線価方式、倍率方式)
土地の相続税評価額は、「路線価方式」もしくは「倍率方式」をもとに計算が可能です。
- 路線価方式:国税庁が毎年決定する主要道路に面した土地の価格に基づいて、土地の評価額が決まる方式
- 倍率方式:路線価方式が設定されていない地域を対象として、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価される方式
土地の評価は、土地の種類や地域に合った計算方法を用いて、正確に評価額を算出する必要があります。
相続税の土地評価の具体的な計算方法は、下記の記事で解説しています。
詳細は「相続税の土地評価は自分でできる!具体的な手順と減税・節税の方法を解説」をご覧ください。
持ち家の相続で節税する方法9つ
持ち家の相続で節税する方法を、以下に9つ紹介します。
- 1.小規模宅地等の特例を活用
- 2.配偶者控除の適用
- 3.生前贈与の活用
- 4.生命保険の非課税枠
- 5.相続時精算課税制度の利用
- 6.共有名義にする
- 7.家族信託の活用
- 8.不動産の売却
- 9.専門家に相談する
1.小規模宅地等の特例を活用
小規模宅地等の特例を活用すると、被相続人が居住していた宅地や事業用の宅地について、一定の要件を満たす場合、相続税評価額を最大80%減額できます。
具体的には、被相続人が住んでいた宅地であれば330㎡までの部分について評価額が80%減額されます。
ただし、適用を受けるためには、相続人が引き続き相続する宅地に居住するなどの条件もあるため注意が必要です。
もし宅地に居住する場合は、特例を活用することで、持ち家の相続税負担を大幅に軽減できます。
2.配偶者控除の適用
持ち家を相続する際、配偶者控除を適用すると相続税の負担を軽減できます。
配偶者控除は、配偶者が相続する遺産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか高い金額まで相続税が非課税となる制度です。
ただし、以下の適用条件があるためよく確認しておきましょう。
- 被相続人の配偶者であること
- 相続税の申告期限内(被相続人の死亡から10カ月以内)に、適切な申告をおこなう
- 遺産分割協議が成立し、配偶者が実際に持ち家を取得することが確定していること
上記の条件を満たすことで、配偶者控除を適用して持ち家の相続における税負担の軽減が可能です。
3.生前贈与の活用
生前贈与を活用することで、持ち家の相続税の負担を軽減できます。
生前贈与とは、被相続人が生前に財産を贈与することで、相続時の財産総額を減らし、相続税の課税対象を抑える方法です。
ただし、贈与税が発生する場合もあるため、注意が必要です。
たとえば、年間110万円までの贈与は非課税となる「暦年課税制度」や、特定の条件下で2,500万円まで非課税となる「相続時精算課税制度」などがあります。
制度を適切に利用することで、相続税の節税効果が期待できます。
4.生命保険の非課税枠
生命保険金には、相続税の非課税枠が設けられています。
具体的には、以下の範囲内の保険金は非課税限度額となり、相続税の課税対象外となります。
- 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
また、非課税枠の適用を受けるためには、以下の条件に注意が必要です。
- 受取人が相続人であること
- 相続放棄をした人や相続権を失った人は、法定相続人の数に含まれない
- 法定相続人のなかに養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数には制限がある
生命保険の非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減していきましょう。
5.相続時精算課税制度の利用
相続時精算課税制度を利用すると、持ち家の相続税対策に役立ちます。
相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの贈与に対して贈与税が非課税となります。
加えて、贈与者の死亡時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。
また、2024年1月1日以降は、年間110万円の基礎控除も適用されるようになりました。
ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税への変更ができません。
そのため、贈与時の評価額が相続時の評価額より高い場合でも、贈与時の評価額で相続税が計算される点に注意が必要です。
6.共有名義にする
持ち家を共有名義にすると、相続税の節税対策ができます。
複数の相続人が持ち家を共有することで、各人の相続財産の評価額が分散され、個々の相続税負担を軽減可能です。
ただし、共有者の一人が亡くなった場合、その持分がさらに相続の対象となり、共有者が増加することで意思決定が複雑化するリスクもあります。
また、共有不動産の売却や改築には全員の同意が必要となるため、手続きが煩雑になる場合もあります。
そのため、もし共有名義を選択する際は、将来的なリスクや手続きの煩雑さを十分に考慮してから判断をしましょう。
7.家族信託の活用
節税効果は限定的ですが、家族信託は、財産管理や相続対策が可能です。
家族信託を設定する際、財産の所有権は受託者に移ります。
加えて、受益者が利益を受け取るため、贈与税や相続税の課税対象となります。
ただし、信託の内容や受益者の状況によっては、特定の税制優遇措置を適用できる場合があるため、適切な設計をおこないましょう。
8.不動産の売却
相続した持ち家を売却することで、相続税や維持費の負担を軽減可能です。
とくに、相続開始から3年10カ月以内に売却すると、「取得費加算の特例」が適用され、譲渡所得税の負担が減少します。
また、被相続人が一人で住んでいた家屋を一定の条件下で売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例もあります。
ただし、特例の併用はできないため、どちらを適用するか慎重な検討が必要です。
さらに、空き家のまま放置すると固定資産税の負担が増加するリスクもあるため、早めの売却の検討が望ましいです。
9.専門家に相談する
持ち家の相続税対策には、税理士や弁護士などの専門家への相談が効果的です。
たとえば、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」などの適用条件や手続きについて、専門的なアドバイスを受けることで、適切な節税が可能となります。
また、家族信託や生前贈与などの複雑な手続きも、専門家のサポートを受けることでスムーズに進められます。
さらに、相続税の申告期限や納付方法についても、専門家の指導により、期限内に正確な申告と納付が可能です。
専門家は、最新の税制や法律に精通しており、個々の状況に応じた最適な節税策を提案できます。
相続税の申告手続きと必要書類一覧
相続税の申告の流れを、以下に紹介します。
- 相続税の申告フロー
- 持ち家の相続に必要な書類一覧
それぞれ解説します。
相続税の申告フロー
持ち家を相続する際の相続税申告手続きは、以下のステップで進めます。
- 法定相続人の確定
- 財産と負債の調査
- 相続放棄や限定承認の検討
- 準確定申告の実施
- 遺言書の確認
- 相続財産の評価
- 遺産分割協議の実施
- 相続税申告書の作成と提出
- 相続税の納付
上記の手続きを適切におこなうことで、持ち家の相続にともなう相続税申告を円滑に進められます。
持ち家の相続に必要な書類一覧
持ち家の相続に必要な書類を以下にまとめました。
書類項目 | 必要書類 | 概要 |
被相続人に関する書類 | 戸籍謄本 | 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 |
住民票の除票 | 被相続人の最終住所地の住民票の除票 | |
相続人に関する書類 | 戸籍謄本 | 全相続人の戸籍謄本 |
住民票 | 全相続人の住民票 | |
印鑑証明書 | 全相続人の印鑑証明書 | |
不動産に関する書類 | 登記事項証明書 | 相続する不動産の登記事項証明書 |
固定資産評価証明書 | 市区町村から発行される固定資産評価証明書 | |
不動産の賃貸借契約書 | 賃貸中の場合、その契約書 | |
財産目録 | 遺産目録 | 被相続人の全財産を一覧にしたもの |
遺言書や遺産分割協議書 | 遺言書 | 存在する場合、その写し |
遺産分割協議書 | 相続人全員で作成したもの | |
その他の書類 | 相続税申告書 | 税務署から入手する申告書 |
債務控除に関する書類 | 被相続人の債務を証明する書類 | |
葬儀費用の領収書 | 葬儀にかかった費用の領収書 |
弁護士や税理士などの専門家へ相談し、適切に書類を準備したうえで、相続税の申告期限内に提出をおこないましょう。
持ち家の相続税を支払う際の注意点
持ち家の相続税を支払う際の注意点は、以下の3つです。
- 相続税の納付期限と延滞金のリスク
- 分割納付(延納・物納)の制度・利用条件
- 現金不足の場合の対策
それぞれ解説します。
相続税の納付期限と延滞金のリスク
持ち家の相続税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納付が必要です。
もし期限を過ぎた場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるリスクもあります。
- 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合、税額の10%から20%が加算される
- 延滞税:納付が遅れた日数に応じて日割りで計算され、納期限の翌日から2カ月までは年2.4%、以降は年8.7%の割合で課される
上記のペナルティは納税額を大幅に増加させるため、期限内に申告・納付をおこないましょう。
分割納付(延納・物納)の制度・利用条件
持ち家を相続する際、相続税の納付が困難な場合には、分割納付(延納・物納)の制度を利用できますが、利用条件があります。
まず、延納制度の利用条件は以下のとおりです。
- 相続税額が10万円を超える場合
- 金銭での一括納付が困難である場合
- 延納税額および利子税に相当する担保を提供すること
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は担保の提供が不要です。
次に、物納制度の利用条件は以下のとおりです。
- 延納によっても金銭での納付が困難である場合
- 物納申請財産が日本国内に所在する一定の財産であること
- 物納申請期限までに物納申請書と必要書類を提出すること
また、物納に充てられる財産には順位があり、不動産や船舶、国債証券や地方債証券、上場株式などが第1順位とされています。
制度を利用する際は、所定の手続きや期限を守る必要があるため、詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。
現金不足の場合の対策
現金不足の場合の対策は、分割納付(延納・物納)の制度のほかに以下が挙げられます。
- 不動産の売却:相続した持ち家を売却し、その売却代金を相続税の納付に充てる方法
- 生命保険の活用:被相続人が生命保険に加入していた場合、受取人が受け取る保険金を納税資金として活用する方法
- 金融機関からの借入れ:納税資金を確保するために、金融機関からの借入れを検討する方法
ただし、不動産の売却には時間がかかり、金融機関からの借入れには利息がかかるため、よく検討したうえで活用してみてください。
持ち家の相続でよくある質問
持ち家の相続でよくある質問を、以下にまとめました。
- 持ち家を相続すると相続税はかかりますか?
- 小規模宅地等の特例とは何ですか?
- 小規模宅地等の特例以外の相続税の軽減方法はありますか?
- 相続税の支払い期限はいつですか?
- 相続税の支払いが困難な場合、分割払いは可能ですか?
- それぞれ紹介します。
持ち家を相続すると相続税はかかりますか?
持ち家を相続する場合、持ち家の評価額が基礎控除額を超えると相続税の課税対象です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
ただし、「小規模宅地等の特例」を適用することで、一定の条件下で評価額を最大80%減額できます。
小規模宅地等の特例とは何ですか?
小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた宅地などを相続する際、一定の条件を満たすことで、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
適用条件として、相続人が被相続人と同居していたことや、相続後もその宅地に居住し続けることなどが求められます。
小規模宅地等の特例以外の相続税の軽減方法はありますか?
小規模宅地等の特例以外にも、配偶者の税額軽減や未成年者控除、障害者控除など、相続税を軽減する制度があります。
ただし、各制度には適用条件があるため、詳細は専門家に相談してみましょう。
相続税の支払い期限はいつですか?
相続税の申告と納税は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10カ月以内におこなう必要があります。
もし、期限を過ぎると延滞税が発生するため、早めの対応を進めましょう。
相続税の支払いが困難な場合、分割払いは可能ですか?
相続税の納付が困難な場合、延納や物納といった制度を利用できる場合があります。
延納は分割払い、物納は不動産などで納税する方法です。
一方で、それぞれ適用条件があるため、詳細は税務署や専門家に相談してみましょう。
【まとめ】持ち家の相続税対策は早めの準備が大切
持ち家の相続で損をしないためには、小規模宅地等の特例や配偶者控除の適用、生前贈与などの節税対策を活用するのがおすすめです。
加えて、各制度には適用条件があるため、詳細は専門家に相談するのがおすすめです。
また、相続税の申告と納税は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10カ月以内におこなう必要があります。
申告や納税期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が発生するため注意しつつ、早めに準備をおこないましょう。
もし相続税についてお悩みの方は、ぜひ翔和会計までお気軽にご相談ください。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。