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孫が相続したときの相続税はどのくらい?算定方法を詳しく解説

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もし自身が死亡した際、誰に財産を譲渡させるかは大きな悩みのひとつとなるでしょう。なかには自分の子どもではなく、孫に財産を譲りたいと考えている人もいるはずです。

孫が相続したときも、当然ながら一定額の相続税が発生します。この記事では孫に財産を譲渡したい人向けに、相続税の算定方法に加えて節税する方法も解説しています。

記事を参考にしつつ、相続税の負担を軽減する方法について押さえてください。

孫は原則相続の対象ではない

そもそも被相続人から見た孫は、原則相続の対象にはなりません。なぜなら民法の規定では、法定相続人を以下のように規定しているためです。

  • 第一順位:子
  • 第二順位:直系尊属
  • 第三順位:兄弟姉妹

なお配偶者は必ず相続人となり、誰と相続するかで財産の取り分が変わります。

子が相続人

配偶者1/2、子1/2

直系尊属が相続人

配偶者2/3、直系尊属1/3

兄弟姉妹が相続人

配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

このように大原則として、孫は相続人に該当しないことを押さえてください。

孫が相続するケース4つ

基本は相続人にならない孫ですが、例外的に相続が認められるケースもあります。孫が相続できる条件は、大きく分けて4つです。

  • 代襲相続
  • 養子縁組
  • 遺言
  • 生前贈与

孫に財産を譲渡したいのであれば、これらの条件をしっかりと押さえましょう。

代襲相続が発生する

まず条件のひとつとして挙げられるのが、代襲相続が発生したときです。代襲相続とは、被相続人の子に以下の事情が生じた場合に、孫などが代わりに相続する制度を指します。

(代襲相続が発生する要件)

被相続人の子に生じた事情

概要

死亡

相続発生前に死亡すること

相続欠格

故意に被相続人を殺害したなどの不法行為が見られた

廃除

虐待などを理由に被相続人が子への相続を拒否した

まずは、こちらの条件に該当していないかを確認してください。

孫を養子にする

代襲相続に該当しないときは、被相続人と孫を養子縁組する方法があります。孫を養子にすれば、法律上は「子」と扱われます。そのため被相続人の財産を相続でき、相続分も実子と同じです。

手続きは市区町村役場で可能ですが、孫が未成年にあたる場合は家庭裁判所から許可を得ないといけません。

さらに孫が15歳未満である場合、養子縁組をするには法定代理人(孫の両親)の同意が必要です。仮に被相続人が養子縁組したいと思っても、法定代理人から拒否されるのが自然でしょう。

遺言書を用いる

遺言書を用いれば、特定の財産だけ引き継がせたり、割合で相続分を指定したりと柔軟に対応できます。遺言には大きく分けて3種類あります。

遺言の種類

概要

自筆証書遺言

本人が「自筆」で記載・捺印する

公正証書遺言

2名以上の証人を選び、公証人が作成

本人と2名の証人は署名・捺印だけ行う

秘密証書遺言

公証役場で作成するが遺言の内容は公証人にも伏せる

この中で特に利用されるケースが多いのが、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

生前贈与で孫に財産を渡しておく

相続ではなく、生前贈与で孫に財産を渡す方法もあります。

仮に生前贈与をしたときは、相続税ではなく贈与税を納めないといけません。贈与税の基礎控除は110万円(暦年贈与)であり、税額も高くなりやすいので注意が必要です。

一方で相続時精算課税制度を選んだり、結婚資金や教育費用に該当したりすれば控除額も大きくなります(詳しくは後述します)。また相続税は引き継いだ全ての財産に発生しますが、贈与税は贈与分しかかかりません。

生前贈与はあくまで契約であるため、両者に意思能力があることが条件です。未成年の孫に財産を譲るのであれば、法定代理人から同意を得なければなりません。

孫の分の相続税等はどう算定されるか

一般的な相続税を算定する際には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が控除されます(基礎控除)。

例えば法定相続人が3人であれば、「3,000万円+1,800万円」で控除額は4,800万円です。この条件で6,000万円を相続すると、4,800万円を差し引いた1,200万円に税金がかかります。相続財産が基礎控除に満たなければ、相続税は発生しません。

以上を踏まえ、孫が財産を相続したときに発生しうる税金と算定方法を解説しましょう。

相続税は2割加算の対象になることも

孫へ相続する際の注意点として、代襲相続に該当しないと相続税が2割加算になることを押さえてください。優先順位はあくまで法定相続人であり、不公平さをなくすために当該制度が採られています。

孫を養子にしても、相続税は変わらず2割増しで納めないといけません。税額の計算は複雑であるため、できる限り専門家に算定してもらいましょう。

不動産取得税の扱い

孫が成人に達していれば、不動産を譲るケースも考えられるでしょう。相続で不動産を譲り受けた場合、不動産取得税は発生しません。

一方で生前贈与や遺贈で取得したときは、不動産取得税も納める必要があります。税額の算定方法は「固定資産税評価額×4%」です。しかし2027年3月31日までは、次のような特例が設けられています。

不動産の種類

算定方法

土地+建物

固定資産税評価額×3%

新築住宅

(固定資産税評価額−1,200万円)×3%

宅地

固定資産税評価額×1/2×3%

このほかにも、さまざまな特例があるので専門家と一緒に確認してください。

登録免許税の扱い

登録免許税は、相続や生前贈与にかかわらず不動産を取得した相続人は支払わないといけません。孫がどのように財産を引き継ぐかで、算定方法が異なります。

財産の引き継ぎ方

算定方法

相続

固定資産税評価額×0.4%

贈与

固定資産税評価額×2%

不動産の相続や贈与を考えている人は、各種税金もしっかりと押さえてください。

孫の相続分において節税する方法

孫が財産を引き継ぐと、相続税等が多くかかることも珍しくありません。一方で相続や生前贈与も、場合によっては軽減措置が採られるケースもあります。主な節税の方法について解説しましょう。

相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度とは、次の条件に当てはまる際に贈与税から「2,500万円」を控除する制度を指します。

贈与者

60歳以上の父母・祖父母

受贈者

18歳以上の子や孫

従来まではあくまで控除されるのは贈与税のみで、相続税分は控除の対象になりませんでした。したがって2,500万円を生前贈与して贈与税を控除しても、被相続人の死後に5,000万円を相続したら相続税は7,500万円分から算定されます。

しかし、2024年改正により「110万円」分の基礎控除が設けられました。この分は贈与税のみならず、相続税も控除の対象となります。

ただし一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻れないので注意が必要です。

特例贈与の活用

特例贈与とは、18歳以上の子や孫に対して直系尊属(父母・祖父母)が贈与した際に税率が低くなる制度です。

課税額の例

一般贈与

税率(控除額)

特例贈与

税率(控除額)

600万円以下

30%(65万円)

20%(30万円)

1,500万円以下

45%(175万円)

40%(190万円)

3,000万円超〜

4,500万円以下

55%(400万円)

50%(415万円)

特例贈与が適用されるには、被相続人と孫それぞれの戸籍謄本から年齢や関係性を証明する必要があります。

結婚・子育て資金の一括贈与

財産の贈与においても、結婚・子育て資金を目的とするものであれば1,000万円を限度に贈与税がかかりません(2025年3月31日まで)。こちらの制度は、大きく分けて以下の種類があります。

  • 結婚に関する費用(限度額300万円):挙式費用、転居費用など
  • 妊娠・出産・育児に関する費用:分娩、不妊治療などの費用

孫が結婚や子育てを控えているときにおすすめです。

教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与は孫名義の口座を開設し、教育資金を入れると1,500万円が非課税になる制度です(2026年3月31日まで)。主な資金の例としては、以下の内容が含まれます。

  • 入学金(入園金)や授業料(保育料)
  • 学用品の購入や給食費、修学旅行費
  • スクールバス代

なお学習塾やスポーツ教室のように、学校以外の民間業者に関する金額も非課税となります(限度額は500万円)。また受贈者が30歳未満でないといけません。

孫が相続することによる注意点

孫を相続人にすると、周囲と思わぬトラブルを起こす危険性もあります。相続時の主な注意点を整理しましょう。

ほかの相続人の取り分が少なくなる

孫が相続する際の注意点として、ほかの相続人の取り分が少なくなる点が挙げられます。仮に養子縁組を結べば、子どもが1人プラスされた状態です。

養子も実子と相続分は変わらないので、不満に感じる人が出てもおかしくありません。遺産分割協議が収拾つかないケースもあるので、専門家に相談しながらすすめたほうが賢明です。

遺留分の争いが生じやすくなる

遺留分とは、法定相続人が最低限得られる相続分を指します。ほとんどの財産を孫に渡そうとすると、ほかの相続人から遺留分を争われる恐れもあります。相続人が誰になるかを把握しておき、最低限の財産は残すなどの配慮も検討しましょう。

死亡保険金で節税できないことも

原則として孫が相続すると、死亡保険金での節税ができなくなります。死亡保険金には非課税枠(法定相続人×500万円)が設けられていますが、この枠を使えるのは法定相続人に限られるためです。

一方で孫と養子縁組すれば、非課税の対象となります。その場合は、下記の人数制限がある点に注意してください。

実子がいる場合

養子1人まで

実子がいない場合

養子2人まで

まとめ

孫が財産を相続したときも、相続税等を納めなければなりません。民法上は法定代理人ではないため、税負担も大きくなる可能性があります。

一方で孫が相続したとしても、利用できる非課税制度は存在します。相続対策に詳しい税理士などに相談しながら必要な生前贈与の対策も同時に検討していく事が有効です。

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監修者:田本啓

監修者
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代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)

大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。

クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。

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