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相続税の申告が不要なケース|0円でも申告が必要な場合に注意
投稿: 更新:ブログ
相続税の申告。多くの方にとって、その必要性を判断することは難しい問題です。相続税は申告が不要なケースがあります。一方で、相続税額が0円でも申告が必要な場合もあり、その判断を誤ると余計な手間や費用がかかってしまう可能性も。
今回は、相続税の申告が不要なケースと必要なケース、それぞれについて詳しく解説します。相続に直面した方はもちろん、将来に備えて知識を得たい方はぜひ最後までご覧ください。
【目次】
相続税の申告が不要なケース
以下の2つに当てはまれば、相続税の申告は不要です。
①相続税額が基礎控除以下
相続税の申告が不要となる最も一般的なケースは、相続税額が基礎控除以下の場合です。
基礎控除額は、【3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】で計算されます。例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の場合、基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円です。
このケースでは、相続財産の総額が4,800万円以下であれば、相続税の申告は不要となります。
ただし、相続財産の評価額は、相続が発生した時点の時価で行われるため、不動産や株式などの資産価値が変動する可能性がある場合は注意が必要です。税理士に相談することをおすすめします。また、相続財産には現金や預貯金だけでなく、不動産、有価証券、生命保険金、退職金なども含まれるため、これらを漏れなく把握することが重要です。
②申告不要な控除を使用して0円
相続税額が基礎控除以下になる場合以外にも、特定の控除を適用することで相続税額が0円となり、申告が不要になるケースがあります。ここでは、申告が不要な4つの控除について詳しく見ていきましょう。
障害者控除
障害者控除は、相続人が障害者である場合に適用される控除です。この控除により、障害の程度に応じて一定額が控除されます。具体的には、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。
例えば、40歳の障害者が相続人である場合、(85歳 – 40歳) × 10万円 = 450万円が控除されることになります。この控除により相続税額が0円になる場合、申告は不要となります。ただし、障害者控除を受けるためには、障害者手帳などの公的な証明書が必要となるため、事前に準備しておくことが大切です。
障害者控除については、以下の記事もあわせてご覧ください。
参考:相続税の障害者控除とは?要件や計算方法をわかりやすく解説
未成年者控除
未成年者控除は、相続人が18歳未満の場合に適用される控除です。この控除では、18歳に達するまでの年数1年につき10万円が控除されます。
たとえば、15歳の相続人がいる場合、(18歳 – 15歳) × 10万円 = 30万円が控除されることになります。複数の未成年者がいる場合は、それぞれに対して控除が適用されます。この控除によって相続税額が0円になれば、申告は不要です。
相次相続控除
相次相続控除は、短期間に2回以上の相続が発生した場合に適用される控除です。具体的には、前回の相続から10年以内に次の相続が発生した場合、前回の相続で支払った相続税の一部が控除されます。
この控除の計算方法は複雑ですが、基本的には前回の相続から経過した期間が短いほど、控除額が大きくなるのが特徴です。この控除により相続税額が0円になる場合も、申告は不要となります。
なお、相次相続控除を適用するためには、前回の相続に関する書類が必要となるため、これらの書類を適切に保管しておくことが重要です。
外国税額控除
外国税額控除は、海外に所在する相続財産に対して外国で相続税が課税された場合に適用される控除です。この控除により、日本の相続税額から外国で納付した相続税相当額を差し引くことができます。
例えば、被相続人が海外に不動産を所有しており、その国で相続税が課税された場合、日本での相続税申告時にこの控除を適用することで、二重課税を回避できます。具体的な控除額は、外国で納付した税額と日本の相続税額のうち外国財産に対応する金額のいずれか少ない方となります。
相続税が0円になっても申告が必要なケース
相続税額が0円になったからといって、必ずしも申告が不要になるわけではありません。特定の控除や特例を適用する場合は、たとえ税額が0円であっても申告が必要となるケースがあります。ここでは、そのようなケースについて詳しく解説していきます。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が相続または遺贈により財産を取得した場合に適用される特例です。この特例により、配偶者が取得した財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額までは、相続税が課税されません。
例えば、相続財産が2億円で、配偶者と子供1人が相続人である場合、配偶者の法定相続分は1億円となります。この場合、配偶者は1億6,000万円まで非課税となるため、相続税額は0円になります。しかし、この特例を適用するためには、相続税の申告が必要です。申告をしないと、この特例が適用されず、思わぬ税負担が生じる可能性があるので注意しましょう。
配偶者控除については以下の記事もあわせてご覧ください。
参考:相続税の配偶者控除とは?適用要件と損をしないための注意点を解説
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たす場合に、その評価額を大幅に減額できる特例です。具体的には、居住用宅地の場合は330㎡まで、事業用宅地の場合は400㎡までの部分について、評価額を80%減額することができます。
この特例を適用すると、相続税額が大幅に減少し、場合によっては0円になることもあります。しかし、この特例を適用するためには、必ず相続税の申告が必要です。申告をしないと、この特例が適用されず、本来なら節税できたはずの相続税を支払わなければならなくなる可能性があります。
寄附金控除
寄附金控除は、相続人が相続または遺贈により取得した財産を国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄附した場合に適用される控除です。この控除により、寄附した財産の価額は相続税の課税価格から控除されます。
例えば、1億円の相続財産を取得し、そのうち5,000万円を指定された公益法人に寄附した場合、相続税の課税対象となる財産は5,000万円に減少するといったものです。この結果、相続税額が0円になることもあります。しかし、この控除を受けるためには、相続税の申告書を提出し、寄附したことを証明する書類を添付する必要があります。申告をしないと、せっかくの寄附が相続税の軽減に反映されないことになりますので、注意してください。
農地の納税猶予の特例
農地の納税猶予の特例は、農業を継続する相続人が一定の農地を相続した場合に適用される特例です。この特例により、農地にかかる相続税の納税が猶予され、相続人が農業を継続している限り、猶予された税額の納付が免除されます。
この特例を適用するためには、相続税の申告が必要です。また、特例適用後も定期的に農業の継続状況を報告する必要があるため、長期的な管理が求められます。
相続税の申告が不要と判断する前に確認すべきこと
相続税の申告が不要だと判断する前に、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。これらの確認を怠ると、思わぬトラブルや追徴課税のリスクが生じる可能性があります。ここでは、申告不要と判断する前に必ず確認すべき事項について詳しく解説します。
見落としている相続財産はないか
相続財産の見落としは、相続税の申告漏れにつながる重大な問題です。現金や預貯金、不動産といった一般的な財産以外にも、相続の対象となる財産は多岐にわたります。
見落とされがちな財産には以下のようなものがあります。
- タンス貯金、へそくり
- 生命保険金、退職金
- 名義預金
- 著作権などの知的財産権
- 骨董品、美術品、
- 海外の資産
また、被相続人名義の資産であっても、実質的に他の人が所有していたケースもあります。このような複雑な状況を正確に把握するためには、被相続人の生前の資産状況や取引履歴を丁寧に調査する必要があります。
相続時精算課税制度を利用したか
相続時精算課税制度は、生前贈与と相続を一体的に捉えて課税する制度です。この制度を選択すると、生前贈与時には贈与税が課税されず、相続時に贈与財産と相続財産を合算して相続税が課税されます。
この制度を利用している場合、たとえ相続時の財産が基礎控除以下であっても、過去の贈与財産との合計額が基礎控除を超える可能性があります。その場合、相続税の申告が必要です。
また、相続時精算課税制度を利用した贈与があった場合、相続税の計算方法も通常とは異なります。贈与時の財産の価額をそのまま相続財産に加算するため、贈与後に財産価値が下落していても、贈与時の価額で計算されることになります。
したがって、被相続人が生前にこの制度を利用していたかどうかを確認することは非常に重要です。制度利用の有無を確認するには、被相続人の過去の税務申告書や贈与契約書などを確認する必要があります。不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続開始前の一定期間に贈与があったか
相続開始前の一定期間に行われた贈与は、相続財産とみなされます。そのため、条件に当てはまる贈与は相続財産に加算する必要があります。これは贈与税の課税有無に関わらず必要です。年間110万円以下の贈与でも、相続財産に加算しなければなりません。
なお、この期間は2023年までは「相続開始前3年間」でしたが、2024年から対象期間が徐々に延長され、2031年には7年間となります。
まとめ
相続税は基礎控除により申告が不要なケースも多いですが、誤った判断をすると、思わぬ追徴課税などのリスクが生じる可能性があります。不安な点がある場合は、是非、弊社までお問い合わせください。円滑な相続手続きのお手伝いをさせていただきます。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。