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相続税と贈与税の違いを徹底解説:どちらを選ぶべきか?
投稿: 更新:ブログ
自分の子や孫に財産を残す方法として、「贈与」と「相続」の2つの選択肢があります。納税の観点から考えると、贈与税と相続税の税金額に違いがあるため、できれば負担の少ない方法を選択したいですよね。
この記事では、財産の受け渡しを検討している方に向けて、贈与税と相続税の基本的な仕組みや、それぞれの税率、基礎控除額、特例制度などについて解説します。
【目次】
相続税とは
相続税とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続した際に課される税金です。
現預金や金融商品、書画骨董、不動産といった財産が課税対象となります。また、死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」も課税対象です。税金を支払うのは、被相続人(亡くなった人)から財産を受け取った相続人であり、相続人は主に被相続人の配偶者や子、孫といった親族が該当します。
贈与税とは
贈与税とは、個人から無償で財産を受け取った際に課される税金です。
財産を受け取った人が納税する義務があり、「毎年1月1日からの1年間にどれだけの財産を受け取ったか」を基準に計算されます。
対象となる財産には、現金や預貯金、株式などの金融商品、土地や建物などの不動産、車などが含まれます。また、保険会社から受け取る保険金、負債の肩代わり、無利子や非常に低い金利での金銭の借り入れによって得た利益も贈与税の課税対象となります。
相続税と贈与税の違い
相続税と贈与税を比較するにあたって、ここでは相続税額に関わってくる3つの違いについて解説します。
税率の違い
相続税と贈与税では課税制度が異なります。
<相続税の税率>
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
– |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
<贈与税の税率>
基礎控除後の課税価格 |
一般税率 |
特例税率 |
||
税率 |
控除額 |
税率 |
控除額 |
|
200万円以下 |
10% |
– |
10% |
– |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
||
600万円以下 |
30% |
65万円 |
20% |
30万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
30% |
90万円 |
1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
40% |
190万円 |
3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
45% |
265万円 |
4,500万円以下 |
55% |
400万円 |
50% |
415万円 |
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
贈与税には、一般税率と特例税率の2種類があります。
一般税率は、一般的な贈与に適用されます。一方、特例税率は、18歳以上の人が直系尊属(父母や祖父母など)から財産を贈与された場合に適用されます。
どちらも最高税率は55%です。しかし、その最高税率が課される適用金額が相続税は6億円超に対し、贈与税は3,000万円もしくは4,500万円を超えた場合になります。
つまり、財産額が同じであっても、贈与の場合の税率のほうが相続税の場合よりも高くなる傾向にあります。
基礎控除の違い
<相続税の基礎控除>
相続税は、相続した財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額がプラスになった場合にのみ、申告・納付の義務が生じます。
基礎控除額は、【3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】で計算されます。
つまり、法定相続人の人数が多いほど、基礎控除額は大きくなります。例えば、法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円となります。
<贈与税の基礎控除>
贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられています。
つまり、1年間に受け取った贈与の合計額が110万円を超えると、その超過分に対して贈与税が課税されます。
複数人から贈与を受けても、合計額が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。
このように、贈与税と相続税では、基礎控除額の算出方法が異なります。相続人が多いほど相続税の基礎控除額が大きくなるのに対し、贈与税は一律の控除額となっています。
特例制度の違い
<相続税の特例制度>
配偶者が遺産を相続する場合、配偶者控除を使うことで、1億6,000万円までの遺産は相続税がかからないという特例制度があります。
参考:相続税の配偶者控除とは?適用要件と損をしないための注意点を解説
また、被相続人の居住用や事業用の土地を、配偶者や同居の親族など一定の要件を満たす人が相続する場合、小規模宅地等の特例を適用すると、その土地の価格を最大80%まで減額して相続税を計算できます。
<贈与税の特例制度>
贈与税にも様々な特例制度があります。例えば、夫婦間で居住用不動産を贈与する際、婚姻期間が20年以上など一定の条件を満たせば、2,000万円までの贈与は非課税となります。
さらに、贈与する資金の使途が明確な場合、住宅取得資金、教育資金、子育て資金などについて、特例制度により一定額まで非課税になることもあります。
相続税と贈与税、どちらが節税になる?
ここまで相続税と贈与税の違いについて解説してきましたが、結局のところ相続税と贈与税どちらが節税になるのでしょうか?
どちらが節税になるかはケースバイケース
相続税と贈与税、どちらが高くなるかは一概には言えません。渡す財産の種類や、贈与する人と受け取る人の関係によって、相続税と贈与税それぞれに適用できる特例制度が異なるためです。
また、相続税には大きな非課税枠がある一方で、贈与税の非課税枠は年間110万円に限られます。そのため、一見贈与税の方が不利に見えるかもしれませんが、毎年110万円の非課税枠を利用して長期間にわたり贈与を行うことで、累計でかなりの額を非課税にすることができます。このため、場合によっては贈与の方が有利になることもあります。
何年にもわたって贈与を行うなど、財産の渡し方によって税額が変わるため、相続税と贈与税のどちらが高くなるかはケースごとに検討・確認することが重要です。
相続開始前7年以内の贈与は相続税の課税対象に
相続税対策として生前贈与を検討している場合、その期間に注意しましょう。
相続開始前7年以内に行われた贈与は、相続税の課税対象となります。つまり、亡くなる直前に急いで財産を贈与しても、相続税の負担を減らすことはできません。
※2023年まではこの期間が「相続開始前3年間」でしたが、2024年から対象期間が徐々に延長され、2031年には7年間となります。
毎年110万円以下の贈与を活用して相続税対策を行う場合、相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象となるため、最低でも4年間は贈与を続ける必要があります。加算期間の改正が完全に施行されてからは、8年以上の期間をかけなければ、相続税対策にならないので注意が必要です。
まとめ
相続税と贈与税の最適な組み合わせや活用方法を検討するには、複雑な税制の理解が必要不可欠です。お客様の具体的な状況に応じた最適な財産承継プランを立てるには、ぜひ税理士等の専門家にご相談されることをおすすめします。専門家のアドバイスを得ることで、相続税・贈与税の負担を最小化し、財産を次世代に円滑に引き継ぐことができます。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。