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相続税の障害者控除とは?要件や計算方法をわかりやすく解説
投稿: 更新:ブログ
障害のある方が遺産を相続する場合、障害者控除を利用することができます。
ただし、この控除を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。
この記事では、相続税の障害者控除の要件や計算方法について解説します。
【目次】
相続税の障害者控除とは
相続税の障害者控除とは、相続人が障害者である場合に適用される税制優遇措置です。
この制度は、障害者の多くが親族に扶養されている状況が考慮されています。扶養者の死によって相続税が障害者に大きく課せられると生活に支障を来すことがあるため、税負担を軽減することを目的としています。
障害者控除は、相続税額から直接一定額を減額するものです。これは、相続財産の評価額を減少させる基礎控除とは異なり、実際に支払う税額そのものを減らすため、税負担の軽減に直接的に寄与します。
障害者控除の要件
障害者控除を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 日本国内に住所がある人
- 財産取得時に障害者であること
- 法定相続人であること
それぞれ詳しく解説します。
日本国内に住所があること
相続で財産を取得した時に日本国内に住所がなければ障害者控除を受けることはできません。日本国内に住所があったとしても、相続人が一時居住者であり、被相続人が外国被相続人または非居住被相続人である場合は適用外となります。
財産取得時に障害者であること
相続税の障害者控除を受けるための障害者は、具体的な要件を満たす必要があり、これらの要件に適合しない場合は控除の対象外となります。障害の有無は相続が開始された時点で評価されるため、実際に相続が発生した時や申告時に新たに評価されるわけではありません。
障害者控除の適用対象となる障害者には、「一般障害者」と「特別障害者」という二つのカテゴリが存在します。
それぞれの主な要件は以下です。
一般障害者
- 児童相談所や知的障害者更生施設で知的障害者と判定された人(重度判定を除く)
- 精神障害者保健福祉手帳で障害等級が2級または3級と記載されている人
- 身体障害者手帳で障害等級が3級から6級と記載されている人
この他にも条件がありますので、詳細は国税庁のホームページで確認してください。
特別障害者
- 児童相談所や知的障害者更生施設で重度の知的障害者と認定された人
- 精神障害者保健福祉手帳で障害等級が1級と記載されている人
- 身体障害者手帳で障害等級が1級または2級と記載されている人
この他にも条件がありますので、詳細は国税庁のホームページで確認してください。
法定相続人であること
遺贈による相続財産の取得者が法定相続人であるとは限らず、しばしば遺言を通じて法定相続人でない人へ財産が渡されます。ただし、法定相続人でない者が相続財産を取得した場合、たとえ障害者であっても障害者控除の適用は受けられません。
相続税の障害者控除の計算方法
相続税の障害者控除額の求め方を解説します。
障害者控除の計算式
相続税の障害者控除は以下の式で計算します。
【一般障害者】(85歳 – 相続開始時の満年齢) × 10万円 【特別障害者】(85歳 – 相続開始時の満年齢) × 20万円 |
ポイントは満年齢で考えるということです。
もし相続人が35歳8ヶ月の一般障害者だった場合、この方の満年齢は35歳となり、
「(85歳-35歳)× 10万円=500万円」が障害者控除額となります。
相続税額より控除額が大きかった場合
障害者控除は額が大きい分、障害者の税額から全額を差し引くことができず、控除額が余る場合があります。
この余剰の控除額は、その障害者の扶養義務者である他の相続人の相続税からも控除することが可能です。
この措置は、扶養義務者が相続する財産が障害者である相続人の扶養に使用されると考えられるために設けられています。つまり、障害者本人が相続する場合も、その扶養義務者が相続する場合も、どちらにしてもその資産は障害者の支援に役立てられると考えられているのです。
扶養義務者が複数いる場合は、以下の方法で控除額の配分を決めます:
・扶養義務者全員の合意により配分を決定する
・扶養義務者全員の相続税額に応じて按分する
具体例
では、具体的な計算例を見てみましょう。
・相続人は、一般障害者の長男(50歳)と扶養義務者の次男(47歳) ・遺産は均等に配分 ・相続税額はそれぞれ200万円 |
【Step1. 障害者控除額の確認】
(85歳 – 50歳)× 10万円=350万円
【Step2. 障害者本人の相続税から控除】
相続税額(200万円)より控除額(350万円)の方が大きいため、長男の相続税は0円。
350万円 – 200万円=150万円の控除額が余る。
【Step3. 余った控除額を次男の相続税額から差し引く】
200万円 – 150万円=50万円
よって、最終的な相続税額は、
- 長男:0円
- 次男:50万円
となります。
障害者控除に必要な書類
障害者控除を申請する際には、相続税の申告書に以下の書類を添付する必要があります。
- 未成年者控除額・障害者控除額の計算書
- 障害者であることを証明する書類(例:障害者手帳のコピー)
未成年者控除額・障害者控除額の計算書は国税庁のウェブサイトからダウンロードすることが可能です。
障害者控除を利用する際の注意点
相続税の障害者控除を利用する際は、以下の点に気をつけましょう。
2回目以降の適用は控除額が減る
障害者控除を利用できるのは一度きりではなく、新たな相続が発生した際にも再度適用することが可能です。ただし、理解しておくべきは、2回目の控除額が通常は少なくなるという点です。
過去に障害者控除を利用していた場合、次に適用する控除額は、以下のいずれか小さい方となります。
- (85歳 − 2回目の相続開始時の満年齢)× 10万円
- (85歳 − 1回目の相続開始時の満年齢)× 10万円 − 1回目の控除額
※特別障害者の場合は20万円で計算してください。
相続時に障害者であることが必要
相続税の障害者控除を利用するためには、相続が始まる時点=被相続人の死亡時点でその時に障害者であるかどうかが重要となります。
相続開始後、相続税申告までの間で障害者になっても適用できません。
通常、障害者であることを証明するためには障害者手帳が必要であるため、もし診断書が障害者の基準に適合する場合、障害者手帳の申請を迅速に行っておきましょう。なお、もし相続開始時点で手帳を申請中の場合は、医師の診断書を使用しても証拠として受け入れられることがあります。
控除の適用で相続税が0円なら申告は不要
障害者控除を適用して納税額が0円になる場合、相続税の申告書の提出は必要ありません。しかし、将来の相続で障害者控除の計算を行う際に必要となるため、控除額を明確にしておくことが重要です。申告書の提出が不要であっても、計算過程や控除額はしっかりと記録しておくことをおすすめします。
【ケース別】障害者控除の適用可否
「このような場合、障害者控除は適用になる?」と質問の多い代表的なケースを3つご紹介します。
要介護認定を受けていた場合→×
要介護認定を受けているだけでは障害者に該当しないため、障害者控除の適用は認められません。ただし、市区町村長などに「障害者控除対象者認定書」を申請し、認定を受けることができれば、控除の適用対象となります。
養育手帳を交付されている場合→○
療育手帳は知的障害があると認定された方に交付されるため、障害者控除の適用を受けることができます。なお、「障害者手帳」とは、一般的に「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の総称として使用されます。
祖父母から孫へ遺贈した場合→×
孫は法定相続人ではないため、遺贈で財産を取得しても障害者控除を受けられません。孫が障害者控除を受けられるのは、代襲相続人である場合や、祖父(祖母)の養子となっている場合になります。
まとめ
相続税の障害者控除は、障害者本人と扶養義務者の相続税負担が大幅に軽減されます。ただし、控除の適用には要件を満たす必要があるため、相続開始前に確認しておきましょう。
相続税は計算が複雑なため、個人での申告はミスが起こりやすいです。早めに税理士に相談することをおすすめします。
当事務所の初回相談は無料です。相続税について不安があれば税理士法人翔和会計にご相談ください。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。