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相続税の追徴課税とは?税務調査の対象になりやすいケースを紹介
投稿: 更新:ブログ
相続税の申告において、税務署から追加で税金を徴収されることを追徴課税といいます。相続税の計算は複雑なため、個人で申告をすると計算ミスや申告漏れが発生しやすいです。このような場合、不足分の納税だけでなく追徴課税分も支払わなければいけません。
この記事では、追徴課税の概要や種類、追徴課税になりやすいケース、注意点などについて詳しく解説します。相続税の申告を控えている方は、追徴課税のリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
【目次】
追徴課税とは
追徴課税とは、相続税の申告に誤りや疑義があるなどの問題が明らかになった場合、徴収される税金のことです。追徴課税は、当初の申告額に上乗せされる形で課されます。
税務調査によって発覚する
追徴課税の多くは、税務署による税務調査によって明らかになります。税務調査は、納税者の申告内容が適正であるかどうかを確認するために行われます。
税務調査の方法としては、税務署の職員が直接納税者の自宅や事業所を訪問し、帳簿や書類を検査する実地調査が主流となっています。この実地調査により、申告漏れや過少申告などの問題が発見された場合、追徴課税が課されることになるのです。
国税庁が発表した「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」の報告書によると、相続税に関する実地調査の結果、調査対象となった案件の約90%で追徴課税が発生していることが明らかになりました。
また、追徴課税となった案件の1件あたりの追徴税額は平均886万円にも上ることが示されています。この金額は、相続税の申告において見落とされがちな財産や評価誤差などが積み重なった結果であり、追徴課税の金額としては非常に高額であるといえます。
これらの数値は、相続税の申告の重要性と、適正な申告を行うことの必要性を裏付けるものといえるでしょう。
相続税の追徴課税
相続税の申告において、4つのペナルティが存在します。
それぞれ詳しく解説します。
延滞税
申告期限までに相続税を納付しなかった場合に課されます。延滞税は、納付すべき税額に対して年率14.6%(納期限から2ヶ月以内は年率7.3%)で計算されます。
過少申告加算税
相続税の申告額が本来の税額よりも少なかった場合に課されます。早めに気づいて自主的に修正をすれば加算されないこともあります。修正申告のタイミングによって税率が変わります。
修正申告のタイミング |
税率 |
税務調査の事前通知前 |
なし |
税務調査の通知〜税務調査による更正等の予知前 |
5% |
税務調査後 |
10% ※期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分については、15% |
無申告加算税
正当な理由なく相続税の申告をしなかった場合に課されます。無申告加算税は、本来納付すべき税額の15%(期限内に自主的に申告した場合は5%)に相当します。
修正申告のタイミング |
税率 |
税務調査の事前通知前 |
5% |
税務調査による指摘 |
15% |
重加算税
相続税の申告において、故意に財産を隠匿するなどの不正行為があった場合に課されます。重加算税の割合は、通常の加算税よりも高く設定されています。
過少申告の場合 |
追加納付する相続税の35% |
無申告の場合 |
追加納付する相続税の40% |
このように、相続税の申告における不正行為に対しては、厳しいペナルティが設けられているのです。
税務調査によって追徴課税になりやすいケース
税務署は、相続税の申告内容に疑義がある場合、税務調査を行います。以下のようなケースでは、税務調査が入りやすく、追徴課税のリスクが高くなります。
相続財産の額が大きい
相続財産の総額が多額になるほど、税務調査の対象となるリスクが高まります。一般的に、遺産額が2億円を超える場合、税務調査を受ける可能性が高くなるといわれています。
これは、故意に財産を隠匿していなくても、相続財産が多岐にわたる場合、申告漏れや評価誤差が発生しやすいためです。
財産の評価が間違っている
土地や建物、有価証券などの評価が適切でなく、本来納付すべき相続税よりも低い金額で申告してしまうケースは珍しくありません。不動産は、相続財産の中でも高額になる傾向があるため、評価計算のわずかな誤差が、相続税の金額に大きな影響を与える可能性があります。
把握していない財産の計上漏れ
相続財産の中には、以下のような目に見えにくい資産があります。
- 隔地に所有している不動産(国内外を問わず)
- ネット銀行やオンライン証券会社の口座
- 海外に保有する金融資産
- 暗号資産(仮想通貨を含む)
これらの資産は、実物が手元にないことや、情報が集約されていないことから、相続人が把握しにくい傾向にあります。そのため、故意ではなくても、申告漏れが発生するリスクが高くなります。
特に、海外資産や暗号資産は、国内の金融機関の情報とは連携されていないことが多いため、注意が必要です。
死亡直前に多額の預金引き出しがある
被相続人が死亡前に多額の預金を引き出していた場合、税務署はその資金の使途を調査することがあります。不自然な資金の流れがある場合、追徴課税のリスクが高まります。
生前所得と申告財産に差がある
被相続人の生前の所得と相続財産の申告額に大きな差がある場合、追徴課税のリスクが高まります。特に、被相続人の所得に比べて、相続税の申告で記載された財産の額が著しく少ない場合、税務署は申告内容に疑義を抱き、税務調査の対象とする可能性が高くなります。
名義預金がある
相続税の申告において、名義預金がある場合も税務調査の対象となる可能性が高くなります。名義預金とは、例えば親や祖父母が、子供や孫の名義で開設した預金口座のことです。
税務調査が行われる際、名義預金の存在についてはほぼ必ず確認が行われます。税務署の職員は、預金口座の開設者が誰であるか、また、その口座の届出印鑑が誰のものであるかを詳しく調べます。
もし、名義預金の実質的な所有者が被相続人であったと判断された場合、その預金は相続財産に含まれることになります。したがって、相続税の申告において名義預金を漏らしていた場合、追徴課税が発生する可能性が高いのです。
追徴課税の注意点
追徴課税には、以下のような注意点があります。
納税は現金のみ
追徴課税の納付は、原則として現金で行う必要があります。通常の相続税の納付では、相続財産の一部を国に納める物納という方法がありますが、追徴課税の場合は現金納付のみが認められています。
また、追徴課税の納付は一括払いであるため、納税者はまとまった現金が必要です。
連帯納付義務がある
相続税には「連帯納付義務」があります。これは追徴課税についても同じです。一人の相続人が追徴課税分を支払えない場合、他の相続人が代わりに支払う必要があります。
自己破産しても免責されない
自己破産は、債務者の借金を免除する制度ですが、全ての債務が免責されるわけではありません。自己破産の手続きにおいても、免責の対象とならない「非免責債権」と呼ばれる債務が存在します。
非免責債権には、「税金」「罰金」「国民健康保険料」「国民年金保険料」などが含まれます。これらの債務は、自己破産が認められた後も、引き続き支払い義務が残ります。
特に、税金については、追徴課税を含め、自己破産の免責対象から外れています。つまり、仮に自己破産が認められたとしても、追徴課税額は免除されず、納税者は引き続き納付する必要があるのです。
追徴課税が払えない場合
税金の納付は国民の義務とされています。したがって、仮に手元に十分な資金がない状況でも、何らかの方法で納税しなければなりません。
追徴課税が払えない場合、以下のような対応が考えられます。
お金を借り入れて支払う
追徴課税の納付に必要な資金が不足している場合、金融機関からの借り入れを検討することも一つの選択肢です。使途を限定しないフリーローンや、担保を必要としないカードローンなどを利用することで、追徴課税の納付資金を確保することができます。
ただし、「即時融資可能」「信用情報が不良でも借り入れ可能」などをうたっている貸金業者には十分な注意が必要です。こうした業者の中には、法律で定められた上限金利を大幅に超える高金利で貸し付けを行う、いわゆる闇金業者が含まれている可能性があります。
納税猶予の制度を利用
やむを得ない事情により追徴課税の一括払いが難しく、生活の維持に支障をきたす場合には、納税猶予や換価の猶予が適用される可能性があります。
納税猶予は、自然災害などの影響で納付期限から1年以上遅れて税額が確定した場合に限り、最長で2年間の分割納付が認められる制度です。ただし、相続税の修正申告書と納税猶予の申請書を、追徴課税の納付期限までに提出する必要があります。
一方、換価の猶予は、追徴課税の支払いによって生活や事業の継続が困難になる場合に適用される制度で、1年間の分割納付や延滞税の一部または全額が免除されることがあります。換価の猶予を申請する際は、追徴課税の納付期限から6カ月以内に、換価の猶予申請書を税務署に提出しなければなりません。
まとめ
相続税の追徴課税は、申告漏れや過少申告があった場合に課されるペナルティであり、納税者に大きな負担を強いるものです。追徴課税のリスクを最小限に抑えるためには、相続税の申告を正確に行うことが何よりも重要です。
無申告のまま税務署からお尋ねが来た、申告内容に不安があるといった方は申告期限後であっても早めに申告を行ったり修正申告を行うことで追徴税額を抑える事が出来ますし、納税額が大きくなる方も申告と一緒に納税の計画を立てることで安心して進めることが出来ます。
相続税について不安があれば税理士法人翔和会計にご相談ください。初回相談は無料で対応いたします。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。