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遺言書を開封してしまった!効力や罰則について解説

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遺品の整理をしていたら遺言書が出てきたら、動揺すると思います。しかし、その場で開けてはいけません。遺言書の開封には、法律で定められた手順があるのです。

この記事では、遺言書を開封してしまった場合に起こる事態と、正しい検認の手順、開封を予防する方法について詳しく解説します。

遺言書を見つけても開封してはいけない

大切な人が亡くなった後、遺言書を見つけたら、きっと中身を確認したくなるものです。しかし、遺言書は勝手に開封してはいけません。

勝手に開封するのは法律違反

遺言書を勝手に開封することは、法律で禁じられています。民法第1004条では、「遺言書の開封は、家庭裁判所が検認した後でなければならない」と定められているのです。この規定に反して遺言書を開封した場合、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。また、遺言書を改ざんした場合は、刑事罰の対象となることもあるでしょう。

遺言書は開封前に検認必要

遺言書を開封する前に、家庭裁判所による検認が必要です。検認とは、遺言書が法律の定める方式に従って作成されたものであるかを確認する手続きのことです。検認の申立ては、遺言書を保管している人や相続人が行います。家庭裁判所は、遺言書の形式的な有効性を確認し、開封を許可するのです。

たとえ封がされていないメモ状態の遺言書であっても、遺言者本人が記載したものだと証明するために検認をする必要があります。

検認が必要な遺言書の種類

遺言書には主に3つの種類があります。どの種類の遺言書であるかによって、検認が必要かどうかが分かれます。詳しく見てみましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文を自書し、日付と氏名を記載して押印することで作成される遺言書です。遺言者の意思を最も直接的に反映できる一方で、偽造や改ざんのリスクがあります。そのため、開封前の検認が必要とされているのです。家庭裁判所は、遺言書の筆跡や印影を確認し、遺言者本人によって作成されたものであるかを判断します。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述を録取し、作成する遺言書です。自筆証書遺言よりも有効性の高いものとなります。その後も原本が公証役場で保管されることから、改ざんの可能性がないため、検認の手続きは不要となります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が遺言の内容を記載した文書を封印し、公証人に提出することで作成される遺言書です。遺言の内容を秘密にしたまま、公証人による認証を受けられます。ただし、遺言書の存在を証明するだけで、中身の確認はできていないことから、秘密証書遺言も開封前の検認が必要です。

遺言書を開封してしまったらどうなる?

もしも遺言書を開封してしまったらどうなるのでしょうか?

開封してしまっても効力や相続権は失われない

勝手に開封したからといって、それだけで遺言書が無効になることはありません。また、開封した人が相続権を失うこともありません。

もっとも、検認前に遺言書を開封することは違法行為ですので、絶対に開封してはいけません。ただし、もし誤って遺言書を開封したとしても、遺言書の効力や相続権が失われることはないので安心してください。

他の相続人に「遺言は無効だ!」「あなたは相続できない!」と言われたとしても、落ち着いて速やかに家庭裁判所に検認の申立てを行いましょう。

遺言書を改ざんした場合は相続権を剥奪される

遺言書を開封した上で、内容を改ざんした場合は、相続権を失います。民法第891条は、「遺言の内容を偽造し、変造し、又は隠滅した者は、相続人となることができない」と定めているからです。遺言書の改ざんは、遺言者の意思を無視し、他の相続人の利益を不当に害する行為にほかなりません。また、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿は刑事罰の対象となる可能性もあります。

遺言書の開封によって起こる弊害

遺言書は、日付と氏名の記載、押印が必須です。押印がないと、原則無効とされてしまいます。

しかし過去には、封筒にされた押印(封印)が遺言書の押印として認められ、遺言が有効となったケースもあります。これは、未開封の状態で検認が行われ、封筒と遺言書の一体性が明白だったからでしょう。

逆に、同じように封筒に押印がされており遺言書自体に押印が欠けていた場合でも、開封してしまった後に検認が行われたことで封筒と遺言書の一体性が証明できず、無効になった事例もあります。

 

遺言書を開封してしまっても、それだけで遺言が無効になることはありません。ただし、それは中に封入されている遺言書に問題がなかった場合に限ります。もし中身に押印がされていなかった場合、原則は無効ですが、検認で開封されることで封印との一体性を認められる可能性もあるのです。少しでも有効になる可能性を潰さないために、封印された遺言書は絶対に開封してはいけません。

正しい検認の手順

検認は以下の手順で行います。

①必要書類の準備

申立手続きに必要な書類を用意します。主な書類は以下です。

  • 申立書
  • 遺言者の戸籍謄本(出生時から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本

追加書類の提出が必要な場合もあるため、管轄の家庭裁判所に確認しましょう。

②検認申立書の作成

申立書は裁判所のHPからダウンロードできます。(家事審判申立書)

記入例を参考に、太枠内に必要事項を記入します。

③家庭裁判所で検認の手続き

検認手続きを行うのは、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

なお、検認には遺言書1通につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手が必要になります。詳しくは各家庭裁判所にご確認ください。

④検認期日の調整

申立てから数週間〜1ヶ月程で、家庭裁判所から検認の日程調整の連絡が来ます。

申立人は必ず出席する必要がありますが、それ以外の相続人の出席は任意です。

⑤検認の実施

検認日当日、家庭裁判所にて相続人立会いの下、遺言書が開封されます。

申立人は、遺言書と印鑑(申立書に押印したもの)を持参しましょう。

検認前の開封されることの予防策

公正証書遺言を作成する

検認前の開封を防ぐためには、公正証書遺言を作成することが有効です。公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述を録取し、作成する遺言書です。公証人が関与することで、遺言書の信頼性が高まり、勝手な開封のリスクを抑えられるでしょう。また、公正証書遺言は、家庭裁判所の検認を経ずに、すぐに開封することができます。

封筒を二重にしておく

自筆証書遺言を作成する場合は、封筒を二重にすることで、開封を防ぐことができます。内側の封筒に遺言書を入れ、封をした上で、さらに外側の封筒に入れるのです。外側の封筒に「遺言書在中」などと記載しておけば、中身を確認することなく、家庭裁判所に提出できるでしょう。封筒を二重にすることで、勝手な開封のリスクを減らすことができます。

自筆証書遺言の保管制度を利用する

自筆証書遺言は、法務局における保管制度を利用することもできます。この制度では、遺言書を法務局に保管してもらうことで、紛失や改ざんのリスクを防ぐことができるのです。また、遺言者の死亡後、家庭裁判所からの請求に基づいて、法務局が遺言書を提出するため、検認前の開封を防ぐことができます。自筆証書遺言を作成する際は、保管制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

検認前に遺言書を開封することは法律違反です。遺言書を発見したら、速やかに家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。もしあなたが遺言書を書く立場の場合、公正証書遺言の作成や、自筆証書遺言の保管制度の利用を検討して、開封を防ぐことも大切です。

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監修者:田本啓

監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)

大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。

クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。

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