お知らせ・相続ブログ
- ホーム
- お知らせ・相続ブログ
- 遺言書で全財産を一人に相続させることはできる?リスクと作成ポイントを解説
遺言書で全財産を一人に相続させることはできる?リスクと作成ポイントを解説
投稿: 更新:ブログ
遺言書は、自分の死後の財産をどのように分配するかを定めるものです。では、遺言書で全財産を一人の相続人に相続させることは可能なのでしょうか?この記事では、全財産を一人に相続させるケースやそのリスク、遺言書の作成ポイントについて詳しく解説します。
【目次】
遺言書で全財産を一人に相続させることは可能?
結論から言えば、遺言書で全財産を一人の相続人に相続させることは可能です。遺言者は、法定相続分にとらわれず、自由に財産を分配することができます。ただし、相続人の中に配偶者や子供がいる場合、一定の割合(遺留分)は確保しなければなりません。遺留分を侵害する遺言は、相続人から遺留分侵害請求を受ける可能性があります。
遺言書で全財産を一人に相続させるケース
全財産を一人の相続人に相続させる遺言書を作成するケースには、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、代表的な例をいくつか紹介します。
子供がいない夫婦が配偶者に相続させる
子供のいない夫婦の場合、相続人は①配偶者と親、②配偶者と兄弟が相続人となります。このようなケースでは親や兄弟に財産を分けることに違和感を感じる方が多く、また配偶者の生活の安定を最優先に考え、全財産を配偶者に相続させたいと希望することがあります。この場合、配偶者以外の相続人、例えば遺言者の両親や兄弟姉妹には遺産を残さないためには全財産を妻に相続させるという遺言書を残すことが有効です。
他の相続人と不仲
遺産を不仲な親族に渡したくない場合、全財産を信頼できる一人の相続人に託すことがあります。例えば、遺言者に妻子がおらず、両親も既に亡くなっている状況で、兄弟の中で兄と弟との関係が悪い場合、姉だけに遺産を相続させるといったケースです。また異母兄弟がいる場合なども特定の相続人に遺産を相続させるためには遺言書で指定をします。
内縁関係の相手に相続させる
内縁関係にある相手に財産を相続させたい場合、遺言書で明確に定めておく必要があります。法律上の配偶者でない限り、内縁の相手には相続権がないからです。ただし、遺言書で内縁の相手に全財産を相続させると、法定相続人から遺留分侵害請求を受ける可能性が高くなるでしょう。
恩がある人に遺贈したい
お世話になった人や恩人に感謝の気持ちを示したい場合、全財産を遺贈することがあります。遺贈は、相続人以外の人に財産を譲ることを指します。遺言者と深い絆で結ばれた第三者、例えば長年の友人や介護施設のスタッフ、お世話になった団体などが、遺贈の対象になることが多いようです。相続人がこのような遺贈に理解を示している場合、遺言書を作成することで、全財産を遺贈することが可能です。
ただし、法定相続人がいる場合、遺留分に配慮する必要があります。
相続人が一人しかいない
相続人が配偶者や子供の一人しかいない場合、全財産をその相続人に相続させることになります。この場合、遺言書を作成する必要はありません。ただし、遺言書を作成しておくことで、相続人以外の人への遺贈や付言事項を明確にできるでしょう。
例えば、遺言者の両親と配偶者が既に亡くなっており、兄弟姉妹もいない一人息子のケースがこれに当てはまるでしょう。法定相続人が一人しかいないため、遺言書がなくても、全財産は自動的にその相続人に相続されるのです。
一人以外の相続人が相続放棄した
相続人の中に、相続を放棄する人がいる場合、結果的に一人の相続人が全財産を相続することになります。相続放棄とは、相続人が相続する権利を放棄することです。
仮に複数の相続人がいたとしても、一人を除く全員が相続を放棄した場合、相続放棄をしなかった一人の相続人のみが相続の対象となります。このような状況では、特に遺言書がなくとも、相続放棄をしなかった相続人が全財産を相続することになるでしょう。
一人に相続させた方が手続きがスムーズ
相続人が複数いる場合、各相続人に財産を分配するよりも、一人の相続人に全財産を相続させた方が、相続手続きがシンプルになることがあります。
よくある例が、遺産が不動産のみで構成されている場合です。売却が前提の不動産相続だと、複数の相続人が所有者となっているよりも、一人の相続人が単独で所有している方が売却手続きがスムーズに進みます。このような状況を想定し、遺言者が不動産という遺産を一人の相続人のみに残すことがあります。
事業の後継者に相続させたい
事業を営む者の中には、代々受け継がれてきた事業や自ら築き上げた事業を、後継者となる特定の相続人に引き継がせたいと考える人がいます。そのため、事業を承継する相続人に全財産を相続させることを望むケースがあるのです。
旧民法の家督相続制度の下では、長男が全ての遺産を相続するのが一般的でした。このような考え方は現在でも根強く残っていますが、現行民法では長男以外の相続人にも遺留分が認められています。
遺言書で一人に相続させる場合のリスク
全財産を一人の相続人に相続させる遺言書には、いくつかのリスクがあります。ここでは、主なリスクを説明します。
相続人間でトラブルになる可能性がある
全財産を一人の相続人に相続させると、他の相続人から不満や反発を招く可能性があります。特に、法定相続分と大きく異なる分配の場合、相続人間の関係が悪化するリスクが高まるでしょう。遺言者の意思を尊重しつつ、相続人の納得を得ることが大切です。
遺留分侵害請求をされる可能性がある
遺言者の配偶者、子、両親・祖父母には遺留分が保障されており、たとえ遺言で一人に全財産を相続させても、この権利を奪うことはできません。そのため、遺留分を有する相続人がいる場合、全財産を相続する人は、遺留分侵害請求を受けるリスクがあります。
遺留分を侵害する内容の遺言は有効ですが、遺留分権利者から請求があれば、相続人は遺留分相当額を支払わなければならないのです。
相続税が高額になる可能性がある
全財産を一人の相続人に相続させると、その相続人の相続税額が大きくなる可能性があります。相続税は、相続財産の価値に応じて課税されるからです。相続税対策として、生前贈与や財産の分散などを検討することをおすすめします。
一人に相続させる遺言書の作成ポイント
全財産を一人の相続人に相続させる遺言書を作成する際は、いくつかのポイントに注意が必要です。
全財産を相続させると明記する
遺言書には、全財産を特定の相続人に相続させる旨を明確に記載しましょう。曖昧な表現は、解釈の争いを招く恐れがあります。また、相続させる財産の範囲や内容についても、具体的に記述することが大切です。
(例)遺言者が有するすべての財産を、遺言者の妻〇〇(〇年〇月〇日生)に相続させる。
年月日、署名、押印を忘れない
遺言書には、作成した年月日を記載し、遺言者が署名・押印する必要があります。これらが欠けていると、遺言書の効力が認められない可能性があるので注意してください。また、公正証書遺言の場合は、公証人役場で作成する必要があります。
遺言執行者を指定しておく
遺言書で指定された内容を実現するために、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。遺言執行者は、遺言の内容を実現する責務を負います。信頼できる人を選び、その人が遺言執行者を引き受けることを事前に確認しておきましょう。
付言事項を書き足す
遺言書で全財産を一人の相続人に相続させる場合、他の相続人にとっては不公平に感じられるかもしれません。そこで、遺言書の本文に「付言事項」として、このような内容になった理由や遺言者の思いを書き添えることをおすすめします。
付言事項自体に法的拘束力はありませんが、遺言者の真意を伝えることで、他の相続人の理解を得やすくなるでしょう。遺言の内容について納得してもらえるよう、丁寧に説明することが大切です。
遺言者の思いを誠実に伝える付言事項は、相続人間の紛争を防ぎ、円滑な相続手続きにつながる可能性があります。遺言書の作成にあたっては、財産分配だけでなく、付言事項にも心を配ることが肝要と言えるでしょう。
まとめ
遺言書で全財産を一人の相続人に相続させることは可能ですが、リスクも伴います。相続人間のトラブルや遺留分侵害請求、相続税の問題などに配慮する必要があるのです。遺言書を作成する際は、専門家に相談し、適切な内容となるようにしましょう。また、遺言書の内容を相続人に事前に伝え、理解を得ておくことも大切です。遺言者の意思が尊重され、相続人の納得が得られるような遺言書を目指すことが重要なのです。
また、確実に一人の方に財産を承継させたい場合には信託を利用する方法もありますし、一部の財産は生前に贈与若しくは売買すること、あるいは生命保険を活用して財産を特定の者へ確実に承継することなどの方法もありますので一度専門家に相談してみると良いでしょう。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。