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死亡退職金に相続税がかかるのはなぜ?受取人や非課税枠についても解説
投稿: 更新:ブログ
会社勤めの家族が亡くなった場合、遺族は死亡退職金を受け取れることがあります。この死亡退職金には、相続税がかかることがあるのですが、それはなぜでしょう?
この記事では、死亡退職金と相続税について解説します。相続税がかかる理由と、受取人の判断、相続税の計算方法まで解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
死亡退職金は相続税の課税対象
死亡退職金とは、従業員の死亡による退職もしくは退職後の死亡によって支払われる退職金です。生前すでに退職していて、死亡後に退職金の支給額が確定した場合も含まれます。これは、従業員の死亡によって突然収入を失った遺族の生活を支援し、従業員の功労に報いることを目的としています。
一般的に、退職金制度があれば受け取りが可能です。死亡退職金の金額や支給条件は企業によって異なりますが、一般的に勤続年数や職位などに応じて計算されます。
なぜ相続税がかかる?
通常、生前に本人が受け取る退職金には所得税がかかりますが、死亡退職金が相続税の課税対象になるのはなぜでしょうか。これには相続財産の種類が関係しています。
相続財産には「本来の相続財産」と「みなし財産」の二種類があります。
<本来の相続財産>
本来の相続財産とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産で、相続開始時点で被相続人に帰属していたものを指します。これには、不動産、預貯金、有価証券、事業用資産、家財道具などが含まれます。
<みなし相続財産>
一方、みなし相続財産とは、被相続人の財産ではないものの、相続税の計算上、相続財産とみなされる財産のことです。死亡退職金は被相続人が生前に所有していた財産ではなく、死亡をきっかけに受け取る財産のため、みなし相続財産に該当します。その他、生命保険金もこれに含まれます。
つまり、みなし相続財産は、実態としては本来の相続財産と同様であるため、相続税の課税対象となるのです。
死亡退職金は受け取り時期により税目が変わる
死亡退職金が相続税の課税対象となるのは、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定した場合です。死亡後3年を経過してから支給額が確定したものは、受取人の「一時所得」として所得税がかかります。一時所得の場合は、他の所得と合算して確定申告が必要なので注意してください。
支給確定の時期 |
税目 |
死亡後3年以内に支給額が確定 |
相続税 |
死亡後3年経過して支給額が確定 |
所得税(一時所得) |
死亡退職金の受取人
死亡退職金を誰が受け取るかについては、退職給与規定で受取人の指定がされているかどうかによります。
退職給与規定で受取人が指定されている場合
退職給与規定で具体的な受取人が指定されている場合は、その人が受取人となります。この時、死亡退職金は「受取人固有の財産」として扱われます。企業ごとに指定の内容は自由ですが、労働基準法に基づいて以下のように受取人を指定していることが多いです。
第一順位:配偶者(事実婚を含む)
第二順位:労働者の収入によって生計を立てていた子、父母、孫、祖父母
第三順位:第二順位に該当しない子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
退職給与規定による受取人の優先順位は、血縁の強さよりも「故人の収入で生計を支えられていたかどうか」を重視して定められているところがポイントとなります。
なお、退職給与規定で受取人の指定がある場合は、たとえ故人が遺言書で受取人を指定していたとしても退職給与規定で指定された順位が優先されます。なぜなら、この時の死亡退職金は受取人固有の財産とみなされ、相続の対象ではないからです。
ただし、「死亡退職金の受取人は遺言書で指定ができる」といった退職給与規定もあります。このような場合は、遺言書で特定の人物を指定することが可能です。
退職給与規定で受取人が指定されていない場合
退職給与規定自体がない場合や、退職給与規定があっても受取人の指定がない場合、死亡退職金は遺産分割の対象となります。遺言があればその内容に従い、なければ法定相続人に分配されます。
死亡退職金の受取人は、退職給与規定による指定の有無によって異なってくるため、まずは退職給与規定を確認しましょう。
退職給与規定に基づいて受け取った場合でも相続税はかかる
ここで注意すべきなのは、退職給与規定による指定で死亡退職金を受け取った場合でも相続税はかかるということです。「退職給与規定で受取人が指定されていれば、受取人固有の財産とみなされる」という話をしましたが、それは「遺産分割の対象外になる」というだけで、相続税についてはまた別の話になります。
被相続人の死亡3年以内に支給額が確定した死亡退職金が「みなし相続財産」であることに変わりはないので、混同させないよう気をつけましょう。
死亡退職金にかかる相続税の計算方法
死亡退職金を相続した場合、その全額が相続税の課税対象になるわけではありません。相続税の計算において、一定の金額が非課税となる仕組みがあります。
死亡退職金の非課税限度額は以下の式で求められます。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数 |
※注意点
- 法定相続人の数は相続放棄した人も含みます。
- 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいない場合は2人までです。
- 相続人以外の方が受け取った場合、非課税枠は適用されません。
具体例
例えば、死亡退職金が3,000万円あり、法定相続人の妻・長男・次男が受取人となったケースを考えてみましょう。
【各相続人の受取額】
妻:2,000万円
長男:500万円
次男:500万円 (相続放棄)
【非課税限度額】
500万円 × 3人 = 1,500万円
※次男は相続放棄をしていますが、法定相続人に含めます。
【各相続人の非課税額】
相続人ごとに適用される非課税限度額は以下の式で求められます。
各相続人の非課税額 = 非課税限度額 × (各相続人の受取額 ÷ すべての相続人が受け取った死亡退職金の総額) |
※すべての相続人が受け取った死亡退職金の総額については、相続放棄をした人の分は含まれません。
妻:1,500万円 × (2,000万円 ÷ 2,500万円) = 1,200万円
長男:1,500万円 × (500万円 ÷ 2,500万円) = 300万円
次男:0円 ※相続放棄しているため適用なし
【各相続人の課税対象額】
各相続人の課税対象額は以下の式で求めます。
各相続人の課税対象額 = 各相続人の受取額 – 各相続人の非課税額 |
よって、相続人ごとの課税対象額は以下のようになります。
妻:2,000万円 – 1,200万円 = 800万円
長男:500万円 – 300万円 = 200万円
次男:500万円 – 0円 = 500万円
これらを他の相続財産と合算し、基礎控除を超えた場合は相続税が発生します。
よくある質問
死亡退職金は相続放棄をしても受け取れますか?
相続人は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めて全ての相続権を放棄する「相続放棄」を選択できます。相続放棄をした場合でも、死亡退職金を受け取ることは可能です。これは、死亡退職金が「みなし相続財産」として扱われ、受取人固有の財産とみなされるためです。
みなし相続財産は、税法上は相続財産として相続税の課税対象となりますが、受け取りに関しては受取人固有の財産として扱われるため、相続放棄の対象とはなりません。ただし、相続放棄をした本人は、非課税枠を利用することができなくなるという点に注意が必要です。
弔慰金にも相続税はかかりますか?
相続税は、死亡退職金だけでなく、弔慰金や葬儀費用にも課税されることがあります。弔慰金とは、故人を弔い、遺族を慰める目的で贈られる金品のことを指します。通常、相続人が被相続人の勤務先から葬祭料や花輪代などを受け取る場合、非課税となることが多いですが、一定の金額を超える部分については、相続税の課税対象となります。
課税対象となるかどうかは、被相続人の死亡原因が業務上か業務外かによって異なります。
業務上の死亡の場合:普通給与の3年分に相当する額までの弔慰金は非課税となります。
業務外の死亡の場合:普通給与の半年分に相当する額までが非課税の対象となります。
※ここでいう「普通給与」とは、給料や俸給、賃金、扶養手当などを合計した金額を指します。
弔慰金を受け取った際には、死亡退職金とは別に、相続税の課税対象となるかどうかを確認する必要があります。非課税の限度額を超える部分については、相続税が課税されることになります。相続人は、被相続人の死亡原因や受け取った弔慰金の金額を確認し、適切に相続税の申告を行うことが重要です。
まとめ
死亡退職金は、受取期間によって税目が変わったり、会社規定による受取人であるか否かによって財産の扱い方が変わったりと、複雑で難しいポイントが多くあります。
死亡退職金の受取人になる可能性がある場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
当社は相続に関する事前相談を無料で実施しております。相続税についてお困りの際は、お気軽に税理士法人翔和会計までご相談ください。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。