お知らせ・相続ブログ
- ホーム
- お知らせ・相続ブログ
- 相続税が払えない場合どうなる?よくあるケースと対処法を解説
相続税が払えない場合どうなる?よくあるケースと対処法を解説
投稿: 更新:ブログ
遺産を相続することになった際、相続財産の総額に応じて相続税を払わなければいけません。しかし、相続税が払えないという事態に陥ることもあります。期限内に納税できない場合、ペナルティが課されてしまいます。もし相続税を払えない場合、どうしたら良いのでしょうか。
この記事では、相続税が払えない場合の対処法を7つご紹介します。ぜひ参考にしてください。
【目次】
よくある相続税が払えないケース
相続税が払えない状況はどのような時に起こるのでしょうか。
「相続した財産から払えないの?」と思うかもしれませんが、以下のようなケースで相続税を払えないことがあります。
相続財産に不動産が多い
相続税は、原則として「現金で一括納付」と定められています。相続財産の中で不動産が多くを占めている場合、相続人は手元にある預貯金やその他の金融資産から相続税を納めなければいけません。しかし、相続税の額がこれらの金融資産を超える場合、支払いが困難になることがあります。
遺産分割協議がまとまらず預金が引き出せない
相続財産に現預金があっても、相続人間での遺産分割協議がまとまらないことで相続税が払えないというケースもあります。
被相続人が亡くなったことが確認されると、その人名義の銀行口座は直ちに凍結され、遺産分割に関する合意が成立するまではたとえ相続人であってもその口座からお金を引き出せません。財産に十分な現預金が含まれていたとしても、遺産分割協議がなかなかまとまらないことで相続税の支払いができないケースもあるのです。
相続税が払えない場合の対処法
相続税が払えない場合、対処法として以下のような方法があります。
|
延納
相続税の申告は、相続が開始されたことを知った翌日から数えて10ヶ月以内に行う必要があり、通常は現金での一括納付が求められます。しかし、特定の要件を満たす場合には、分割して納付する「延納」も利用可能です。延納が認められる要件は以下です。
- 相続税が10万円以上であること
- 現金での一括納付が難しい状況であること
- 申告期限内に延納のための申請書類を提出すること
- 必要な担保を提供できること
相続財産の75%以上が不動産の場合、最大20年間の延納が可能になります。分割することで一回あたりの税負担は軽くなりますが、その間利子税がかかるため総額は一括払いよりも増える点には注意が必要です。
物納
相続税の支払いが延納を用いても難しい場合、「物納」と呼ばれる財産を直接税として納める方法があります。この制度は相続税に特化した納付方法で、不動産や国債証券、地方債証券、上場している株式などを使用して納税が可能です。ただし、どの財産を物納に利用できるかは、あらかじめ定められた優先順位に基づきますので、納税者が自由に選ぶことはできません。
物納は手続きが複雑であり、さらに物納される財産は通常の市場価格よりも低く評価される傾向にあるというデメリットがあるので注意してください。
なお、相続税の申告期限から10年以内であれば、既に適用されている延納から物納への変更も選択できます。(特定物納)
不動産を売却して現金化する
相続によって得た財産が不動産や株式などの形態をとっている場合、それらを売却して現金化する選択肢もあります。ただし、相続人が複数存在する状況では、一方的に資産を売り払うことは許されません。財産の分割については、遺産分割協議を通じて決定された後の資産に限られます。
また、売却に際しては、まず相続人名義への変更(=相続登記)の手続きが必要です。さらに、不動産の売却から生じる利益には「譲渡所得税」が適用される場合があるため、売却価格を決定する際にはその点を考慮しましょう。
不動産売却は時間がかかる場合が多く、特に相続税の申告期限が迫る中で急ぎで売却を進めると、不利な条件を受け入れることになるリスクもあります。「急ぎすぎて十分な現金を確保できなかった」という状況にならないよう、ゆとりを持って進めることが重要です。
金融機関からの借り入れ
相続税の納税資金を確保するために、銀行からの融資を受ける方法もあります。この場合、借入金とその利息の返済が必要ですが、利子税がかかる延納制度と比べて融資の利率が低ければ、この方法を検討する価値があるでしょう。ただし、相続税支払い専用の融資を利用する際には、通常、担保物件や保証人が求められることが多く、住宅ローンなどの一般的な融資と比較して、審査期間が長くなる可能性があります。
相続放棄
相続財産に借金が多く含まれている場合、相続放棄をすることも一つの手です。
しかし、相続放棄は、相続の事実を知った日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があり、一旦手続きを行うと撤回ができません。さらに、手続き後に知らなかった財産が見つかったとしても、それを相続することはできません。これらの点を考慮し、慎重に決定する必要があります。
また、自分が放棄した相続の権利は次位の相続人に移るため、相続税の負担が家族の別の人に移るだけで、問題の本質的な解決にはならない可能性も考慮するべきです。
預貯金の仮払い制度
預貯金の仮払い制度は、遺産分割協議が完了する前に、故人の預貯金から一定の金額を引き出すことが可能になる手続きです。
原則、故人の預貯金口座は死亡をもって凍結され、お金を引き出せません。凍結解除には相続人全員の同意が記載された遺産分割協議書が必要であり、これがなければ遺産分割協議が成立する前に預貯金に手をつけられないことになっています。
しかし、2019年7月の民法改正によって、この仮り払い制度が導入され、特定の条件下で一定額の資金を引き出せるようになりました。
遺産分割協議が成立しない状態で預金口座の名義変更が行えず、相続税の支払いに困っている場合に有効な解決策となります。
財産の一部分割
遺産分割協議が成立しないことで預金を引き出せない状況であれば、納税に必要な資金分のみ遺産分割協議を進めることが推奨されます。
相続人間で意見が一致しない場合でも、納税が遅れて追加で税金を払うことは誰も望まないはずですので、特定の納税資金に限定すれば合意に達しやすくなるかもしれません。
このように、遺産の一部について先に分割協議を行うことで、故人の口座の凍結を解除し、その資金を相続税の支払いに使用することができます。
相続税を払えないとどうなる?
ペナルティが課される
相続税の申告義務があるにも関わらず、期限内に申告・納税を行わなかった場合、ペナルティとして追加で税が課せられます。また、申告をしていたとしても内容が正しくないと支払わなければならない加算税もあるので注意してください。
無申告加算税
正当な理由なく、相続税の申告を期限までに行わなかったことに対して課される税金です。税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合と、事前通知後に応じた場合では税率が変わります。
延滞税
相続税を期限内に納付できなかった場合に課される税金です。期限内に申告・納付どちらも行なっていない場合は、無申告加算税と延滞税の両方が課されます。
過少申告加算税
期限内に申告・納付していても、本来の財産額よりも少なく申告していた場合は追加で税が課されるので注意しましょう。
重加算税
相続財産を故意に隠したり虚偽申告を行った際に適用される、加算税の中で最も重い加算税です。「故意であるか」「悪意があるか」に関しては、税務調査や証拠資料をもとに多面的に検証され、最終的な評価が下されます。
他の相続人に請求が行く可能性も
相続税には「連帯納付義務」があるため、相続人の誰かが納税しない場合、他の相続人がその税金を支払う可能性が出てきます。
税務署はまず本人に納税するよう働きかけますが、遺産の受け取り後に相続人が行方不明になったり、相続財産を既に全て使ってしまったりするなど納税が困難な場合には、他の相続人が税金を支払うことになることもあります。肩代わりする範囲に上限はあるものの、他の相続人に迷惑をかけることになるため、自分の支払い義務はしっかり果たしましょう。
最終的には財産を差し押さえられる
相続税の支払いを怠ると、最終的には国税庁に財産を差し押さえられます。差し押さえの対象は主に不動産ですが、現金や家具といった動産が差し押さえられることもあります。いきなり差し押さえが実施されるわけではないため、税務署から連絡があった時点で無視せず誠意を持った対応をしましょう。
まとめ
相続税が払えない場合の対処法は多岐にわたり、それぞれにメリット・デメリットがあります。個々の状況に応じて適切な方法を選ばなければなりませんが、要件を満たしていないと利用できない制度もあるため、個人で解決するには難易度が高いでしょう。ぜひ、相続税に強い税理士に相談してみてください。
当社は相続に関する事前相談を無料で実施しております。相続税についてお困りの際は、お気軽に税理士法人翔和会計までご相談ください。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。