お知らせ・相続ブログ
- ホーム
- お知らせ・相続ブログ
- 遺言書が無効になるケース9選|無効にしたい場合の方法も解説
遺言書が無効になるケース9選|無効にしたい場合の方法も解説
投稿: 更新:ブログ
遺言書が存在する場合、通常はその内容に記された故人の意志が尊重されますが、遺言書が常に有効であるとは限りません。
法律に定められた特定の形式に従っていない遺言書は無効とされます。また、形式的には有効であっても、故人の真の意志を反映していない疑いがある場合、相続人は遺言書の無効を主張することが可能です。
この記事では、遺言書が無効になるケースについて詳しく解説します。
【目次】
遺言書が無効になる9つのケース
遺言書の形式は法律で細かく定められており、その形式に沿っていないと無効となります。以下で、遺言書が無効となる主なケースをご紹介します。
自筆ではない
遺言書は遺言者自身が手書きで記す必要があり、そうでない場合は無効となります。ただし、2019年1月から財産目録をパソコンで作成したり、代筆することが可能となりました。また、財産目録として登記事項証明書や預金通帳のコピーを添付することもできますが、全ページに署名と押印が必要です。
日付が明記されていない
遺言書には作成日の記載が不可欠で、その日付が明記されていないとその遺言書は無効となります。明確な「年月日」の形式で書かれている場合は問題ありませんが、「X月X日 吉日」のように具体的な日付が特定できない表現はNGです。「末日」や「遺言者70歳の誕生日」のように日付が特定可能な場合は無効にはなりませんが、より確実にするためには、標準的な年月日の形式で作成日を記載することをおすすめします。
署名・押印がない
遺言書には遺言者の署名と押印が必要です。署名は通常、戸籍上の氏名を使用しますが、芸名や通称、ニックネームで記載されることもあります。ただし、遺言者が明確に特定できる場合に限ります。相続人や第三者に混乱を招かないよう、明確な署名を心がけることが重要です。
また、押印がない場合も無効となります。認印や拇印も有効ですが、問題を避けるために実印を使用することが推奨されます。
内容が不明確
自筆証書遺言を作成する場合、誰に何を相続させるのか、または遺贈するのか明確に書かれている必要があります。「所有している土地を子供たちに譲る」と書いた場合、どの土地を、どの子供に相続させたいのかわかりません。
土地であれば地番や面積、地目などの情報を、預金であれば銀行名から口座番号までの情報といったように、相続内容は明確に記載する必要があります。
正しい方法で訂正されていない
民法に定められた正しい方法で遺言書の訂正を行わない場合、その部分が無効になるか、あるいは遺言書全体が無効になるリスクがあります。
遺言書の修正(加入、削除、訂正)には、以下の手順が必要です。
訂正の場合
- 訂正する部分に二重線を引いて消去
- 二重線の近くに押印 ※元の文字や数字が見えるように
- 正しい文字や数字を横に追記
- 「〇字削除〇字加入」などと記載
- その下に遺言者本人が署名
加筆の場合
- 挿入記号を用いて加筆する場所を示す
- 追記した近くに押印 ※元の文字や数字が見えるように
- 余白に「末尾〇行目〇字加入」などと記載
- その下に遺言者本人が署名
修正テープの使用や塗りつぶしにより内容が不明瞭になると、遺言の意図を理解できなくなるため、その部分が無効になる可能性があります。ただし、明らかな誤記に関しては、遺言の有効性に影響しないとする裁判例も存在します。
共同で書かれている
「共同遺言」とは、2人以上が共同で作成した遺言書のことを指し、民法の第975条に基づいて禁止されています。たとえ夫婦間で共同で作成した遺言書であっても、これは無効とされるため、注意が必要です。
遺言能力がない
認知症などで遺言内容やその効力を理解する能力が不足している場合、遺言者は「遺言能力がない」とみなされ、その遺言書は無効となります。しかし、認知症は一概に「遺言能力がない」とは限りません。認知症の進行度合いに応じて、医師の立ち会いの下で作成された遺言書は有効になることもあります。
さらに、民法では遺言書の作成資格を15歳以上と定めています。遺言が発生した時点で15歳以上であっても、作成時に15歳未満だった場合は、遺言能力がないとして遺言書は無効とされます。
詐欺や脅迫によって書かされた
遺言者が脅迫やそそのかしによって遺言書が作成された場合、その遺言は無効になる可能性があります。遺言者が生前に口にしていたことと異なる内容の遺言書や、重度の認知症状態だったにも関わらず遺言書が作成された場合など、遺言が遺言者自身の真意ではなく第三者の意向で書かれた疑いがある時は、専門家に相談しましょう。
立ち会いの証人が不適格者だった
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する際は、2名以上の証人の立ち会いが必要です。
ただし、未成年者、推定相続人、公証人の関係者などは証人として不適格であり、証人として選ぶことはできません。これらの不適格者が遺言書の作成に立ち会うと、遺言書は無効になる可能性があります。専門家を立会人に選ぶことで、このような問題を避けることができます。
遺言書を無効にしたい場合の流れ
もしも遺言書の有効性に疑問があり、遺言書の無効を主張したい場合は、以下の流れで手続きを進めることが一般的です。
遺産分割協議の交渉
相続人や受遺者が全員合意すれば、遺言に記載された内容と異なる遺産分割を行うことができます。遺言の無効を裁判所で確認する手続きは、時間、労力、費用がかかるため、まずは相続人同士での交渉を試みるのが適切です。
調停
交渉で合意に至らない場合は、調停や訴訟を検討します。遺言能力の有無が主な争点となり、相続人間で「遺言能力があった」「いや、認知症で遺言能力がなかった」といった主張が交わされることが多いです。
遺言の無効を確認する事件に関しては、家事事件手続法の第257条第1項により、訴訟を提起する前に調停を行う「調停前置主義」が適用されます。調停では、調停委員が仲介し、相続人間の合意を目指しますが、合意が見込めない場合は、訴訟の提起も可能です。
訴訟
交渉や調停で解決しない場合、地方裁判所に遺言無効確認の訴訟を提起します。調停は家庭裁判所で行われますが、訴訟は地方裁判所での手続きとなります。訴訟では、原告と被告がそれぞれの主張や証拠を提出し、これらが整った後に裁判官が判断する流れです。また、訴訟の過程で双方が譲歩し、和解に至ることもあります。
まとめ
今回は遺言書が無効になるケースについて解説しました。遺言書は相続におけるトラブルを未然に防ぐためにも残すべきですが、正しい書き方をしないと無効になってしまう可能性があります。これから遺言書を作成予定の方は、専門家に相談して作成することをおすすめします。
当社は相続に関する事前相談を無料で実施しております。遺言書についてお困りの際は、お気軽に税理士法人翔和会計までご相談ください。
監修者
税理士法人翔和会計
代表社員税理士
田本 啓(たもと あきら)
大学卒業後サービサー(債権回収管理総合事務所)にて債権・不動産を中心としたコンサルティング・登記関連サービス
都内会計事務所にて法人様、個人事業主様、経営者様の決算及び申告(節税対策・税務調査対応・独立開業支援業務を含む)並びに相続税・贈与税申告業務を経験。
クライアント様がより経営に集中できる環境を一番に考え会計・税務の枠を超えた総合的なご提案とキャッシュリッチになるための資金繰り分析・実行コンサル支援の他、セミナー運営や節税商品の企画など幅広いサービスを展開しています。